スキップしてメイン コンテンツに移動

高島トレイル貳日目

高島トレイル壹日目
高島トレイル貳日目
高島トレイル參日目
高島トレイル肆日目

日程:2014/05/02-05(三泊四日)

ルート:抜土(05:57) - 大御影山(07:00) - 三重嶽(08:37) - 武奈ヶ嶽(11:55) - 水坂峠(13:26) - 二の谷山(14:42) - 搦谷越(15:43) - 行者山テン場(15:57)
コースタイム:10h00min(休憩時間を含む)
山域:(駄口)、海津、熊川、饗庭野、(古屋、久多)


大御影山:950.1m
三重嶽:974.1m
武奈ヶ嶽:865m
二の谷山:608.2m
距離:27.884km
累積標高:2,391m
天候:曇り一時雨のち晴れ
気温:?℃
湿度:?%
目的:スルーハイク
単独行

夜明け前に目を覚ました。
まだ起きたくないって気持ちと、放尿させろって欲求がせめぎ合う。そこに辻褄を合わせる薄明が訪れた。気持ちを奮い立たせ、欲求を満足せしめる。そんな事からボクの今日は始まった。

沢筋にテントを張るカップルと挨拶を交わし、沢水でボトルを満たす。ここは前日の教訓を活かし、持ち歩く水を半分の1.5ℓにした。消費した食材と酒に合わせれば、2.5kgの減量である。
これはあまりにも大きい。そのあまりにも重い15.4kgを耐えられずにショルダーが裂けたサロモンの負担も軽くなったことだろう。
今回の完走は、ボクの膝が保つかとか、ボクの酒が保つかとか、ボクの気力が保つかとか、そういった問題ではなくて、ボクのバックパックが保つかどうか、って話になっていた。

大御影山だの三重嶽を越える。
朝っぱらから立ち込めている陰鬱な雲は一層その濃さを増し、ジメッと湿り気を帯びた風は身体ごと吹き飛ばしそうな強さとなり、この後訪れるであろう嫌な気配は益々濃厚にその臭気を放ち始めて行った。

ここまで、これでもかってほど執拗にブナ林の淡い色に包まれ、永遠のように広がる高原が繰り広げていた。
ここまでに、変化に乏しい景色を前日から引き続き、絶え間なく繰り返され続けるその視覚に飽いていたのかもしれなかった。
そんな心の戸惑いが、その先へと続くいろんな物事に影響を与えていったのかもしれなかった。

飽いた心に裂けた隙間。そんなところに忍び寄った惰性。
黄色のテープを辿り、その先へと進んだ。しばし進んだのちに、ふと不安を覚えた。これほどまでに高島トレイルの黄色いテープを見掛けない事などあっただろうか。無意識のうちに、黄色いテープの先へと続く踏み後を、考えナシにただただ作業的に辿っていた。まるでこの地には「高島トレイル」以外のルートなど無いかのように。

ここでようやく地形図を確かめた。ここまで急な下りは、そこに見えなかった。明かにこの尾根は、高島トレイルの路では無かった。GPSに依ると高度708m。そのコンタを辿る。おそらくこの尾根だろうと目星を付け、あの先に咲き誇る石楠花までは行ってみようと思った。崖のキワに咲くその美しさは写真に捕らえようも無かったが、その遥か下に響く水音に目を凝らし見れば、そこに微かに認められた滝を見つけた。

間違えたからと云って同じ路を辿るのは面白くない。眼下にはボクの大好きな滝も見える。これまでの単調な風景に飽いていたボクに、他の選択肢など無かった。

気を抜けば死ぬかもしれないルンゼの、容易に剥落しそうな岩を支点にし、時たま伸びるブナの幹を掴み、足を滑らせながら沢へと降り立った。

遥か上の尾根から見下ろした滝が、雪解け水を集めながら豪快に勢いを増して行く。その清流で乾いた喉を潤し、残りわずかだったボトルを満たし、三日分の汗を洗い流して、その先の事を考えた。まだまだ標高は高い。このまま沢を下るには、地形図には載ってはいない滝があるかもしれない。同じ崖を登るにも、そこはとても危険だったし、その先には同じ尾根を辿る面白くもない行為が待っていた。かといって、装備も無く、ショルダーの壊れかけた12kg以上のバックパックを背負っての沢登りも辛い。消去法的な結論は、対岸をよじ登る、だった。

数年前に熊の爪痕が刻まれた幹を眺め、春先の木の芽などを食べたであろう緑がかった新しい熊の糞を見つめる。沢音を避けて止めた、iPodに再び息吹を与えた。

武奈ヶ嶽でいよいよ雨が降り始めた。嫌な予感ばかり的確に中るってことだ。

水坂峠でテリコに勧められていた浄水器を初めて使った。ブナの茂みから流れ出す水はどこまでも清らかで新鮮な感じがするのだが、杉林から湧き出たその水は、なんとなく、濾過しなければならないような気がした。別に杉に恨みが有るワケではない。その花粉に少しばかりの恨みが有るってだけだ。

二の谷山を越え、大自然の中を歩き回る高島トレイルらしからぬ、人工的で異形の環境センターを見下ろし、激しく車行き交う国道を辿り、テン場予定地の搦谷越を訪れた。

その地はボクの想像とは大きく掛け離れ、別荘地として開発された地であった。
こんな車行き交う別荘地では、大層寝覚めも良くなかろうと、道端に萌えるワラビを摘みつつ、その喧騒を離れ、行者山山中に居を構えた。

それがボクの本日の結末。

遭遇:キツネx1、鹿x2、シマヘビx1

呑み:行者山テン場

BGM

コメント

このブログの人気の投稿

南北ドントリッジ下見

日程:2014/10/08(日帰り) ルート:長峰霊園 - 摩耶東谷 - 山寺尾根 - 掬星台 - 桜谷道 - 徳川道 - 北ドントリッジ - 分水嶺越林道 - 布引道 - 新神戸駅 コースタイム:04h 04min(休憩時間を含む) 距離:13.179km 累積標高:1,054m 天候:晴れ 気温:? 湿度:? 目的:例会山行下見 単独行 例会山行のリーダに指名されたからにはヤラざるを得ない。もちろんやること自体は、ヤブサカデハナイ。 「山羊戸渡」を要望されていたのだが、なんかみんなに過大評価している感、満載なルートなだけに気持ちがどうにもこうにも盛上らない。 って云うか、かつてそんな多大なる期待を受けて連れて行ったのに、その数多過ぎる所期を満たすことなんてとても出来やしなくて、ガッカリルートに認定されたことからも気持ちが萎えてしまう。 結局、余り足を踏み入れないコースを案内しますよ、なんて言葉を濁す。とどのつまり「山羊戸渡」までのアプローチの長さ故にダレタ気持ちを、その先から続くひたすらシンドイだけのアルバイトに過ぎない行程を満足させられるだけの力量を持ち合わせていないってコトだけのことだ。 で、選んだのは、摩耶東谷から南北ドントリッジへと続くルート。 ボクは通常、摩耶東谷を辿る時は、日本三大廃墟として名高い「マヤカン」へと詰めるのだが、一応、立入禁止となっている個人所有の敷地へと不法侵入すべく皆を連れて行くわけにも行かず、かと云って摩耶東谷を通しても、最終的にシンドイだけの藪漕ぎになるので、少しはマシだろうと山寺尾根へ抜けるルートを選択した。 通常、ボクひとりで上るのなら、摩耶東谷を谷通しで行くのだが、同行者が居るとなるとそうも行かない。摩耶東谷より入渓し、堰堤を捲いたところで山寺尾根との分岐へと戻った。そこで堰堤工事を知る。この路へは立入禁止だと知った。 山寺尾根をそのまま辿り、途中の広場から摩耶東谷へ下りる路を調べた。だがそこも、人を連れて行くにはどうかなって、路だった。 だからボクは、谷通しで良いかなって思った。 谷を歩く内は涼しくて良かった。だが、一度沢を外れ尾根を伝うと、その急勾配ゆえに、晩秋とは云え、まだまだ激しく照りつける日差しゆえに、段々と消耗していった。 今日はとても暑い日で、リュックの重

紀ノ川水系下多古川 本谷遡行 一日目 2020年6月6日

六月も初めだというのに全国各地で真夏日をたたき出す猛暑が続くなか、これはもう沢だな、と沢装備を整え出社する。 沢足袋のフェルトを張替えていなかったなと、石井スポーツで草鞋を買って大峰を目指した。 「関西起点 沢登りルート100」が見当たらないのでネットで適当に遡行図を探すが途中までのものしか見つからない。 初心者向けの容易な沢で登山道も沢筋に付いているみたいなことが書かれているから、オンサイトで大丈夫だろうとろくに情報も集めずに旅だった。 これがまたえらい苦労する羽目になろうなどとは何も知らずに。 沢沿いに今なお残る集落を抜け川をまたぐと一軒の建物が目についた。 確か川を渡ってすぐぐらいのところが取付きだったよな、うろ覚えの遡行図を思いだし、簡易浄水場の横から続く踏み跡をなぞって入渓した。 朽ち果てた取水口を越えるとすぐ、滝に出会った。 沢足袋に履き替え、草鞋を結ぶ。妙に鼻緒が短くて履きにくい。 念のためi-padで遡行図を確認する。6mの斜瀑(F1)とある。確かに6mくらいの高さだが、斜瀑というかふつうに滝だ。 直登できなくはないが、シャワークライムを強いられる。 思ったよりも気温が低いし日差しもない。入渓したばかりで体も温まっていないのに滝に打たれるのはいややなと、右岸の草付きを捲く。これが見た目以上に悪い。岩の上にうっすらと土がのり、頼りなげに草が生えている程度だった。 手掛かりになる樹根はおろか、幼木ですらほとんど手の届く範囲にはない。 それでも登れそうなポイントを探し、左へ左へとトラバースしていく。しかし、楽に登れそうなところは見つからず、心が折れた。 しかたがない。直登しようと緩んだ草鞋を結びなおした。 途端に鼻緒が切れた。ブチッとした手触りと共に、ボクの張りつめた気持ちも切れた瞬間だった。 取水口より手前まで戻り、今度は左岸を高捲く。獣道やもしれぬかすかな踏み跡をみつけ、たどる。 F1を越えて再び沢へ下りたいのだが、どれだけ探しても下りられそうなルートがない。捨て縄でも張れば別だが、戻ってこないので回収もできない。 下りられないのなら上を目指すしかない。どこかに登山道がついているかもしれないし、いっそ

武庫川水系西ノ谷遡行

武庫川水系西ノ谷遡行 武庫川水系太多田川赤子谷左俣 日程:2014/07/02-03(一泊二日) ルート:親水広場1613 - 入渓1628 - 霞滝1635 - 桜滝1648 - 満月滝1716 - 尾根1741 - 大峰山1834 コースタイム:2h 21min(休憩時間を含む) 距離:? 累積標高:? 天候:晴れ 気温:? 湿度:? 目的:沢登り 単独行 表六甲の沢の汚さに嫌気が差し、武庫川渓谷なら少しはマシだろうと西の谷を目指した。ついでに裏六甲の沢を幾つか絡めるつもりだ。 家の用事を何かしら片付けていると、なんだかんだでいい時間になってしまっていた。 宝塚でJR(宝塚-武田尾¥200)に乗換え、武田尾の駅より廃線跡を辿る。 放置され風化するに任されたトンネルを二つ抜け、親水広場から櫻の園へと入る。その入口を流れる沢が西の谷だ。 先ずは「もみじの道」を辿り、すぐに出会す堰堤を越えてから入渓する。そこですぐさま身支度を整える。沢足袋に履き替え、ラッシュガードを着る。電子機器はジップロックなり、サラスパの袋なり、LOKSAKなりで包み、ORのドライコンプサミットサックなり、EXPEDなりに突っ込んで完全防水にした。 最初の釜に入り腰まで浸かった。身体に籠った熱が嘘みたいに引いていく。暑さに負けてビールや酎ハイ片手に歩いた街中の暑さが、幻だったかの様に思えてくる。 幾つかの小滝を越え、10m程度の滝(霞滝)に出会った。越えられそうな気もするが、メットをも忘れてしまった単独行なので自重する。そして、定石っぽい右岸のルンゼから上った。そこに掛けられた残置ロープを頼るまでもないが、あったらあったでそれは楽だった。 再び緩い斜瀑を幾つか越えていく。そして幾段かの滝で構成された大滝と出会った。下から見上げても、どこが滝口か定かではない。それほどの連なりだった。 しかしその一段目に取付くには茶色く泡立った釜に浸かるか、無理矢理ヘツッて滝に寄るかしかなかった。もちろんその濁りに浸かりたくも無かったし、スタンスやホールドは随所に見られはするが、万が一落ちてしまった時のことを考えるとヘツるのも二の足を踏む。 結局、またまた右岸より草付きを登り、一段目を越えた辺りでトラバースし、上へと続く残置ロープを跨いで、滝へと戻った。