スキップしてメイン コンテンツに移動

YTK 大峯遅駆道100kmハイク肆日目

YTK 大峯遅駆道100kmハイク壹日目
YTK 大峯遅駆道100kmハイク貳日目
YTK 大峯遅駆道100kmハイク參日目
YTK 大峯遅駆道100kmハイク肆日目

ルート:玉置辻 - 大森山 - 切畑辻 - 五大尊岳 - 金剛多和 - 大黒天神岳 - 山在峠 - 吹越峠 - 七越峰 - 大斎原 - 熊野本宮大社

日程:20130503-06(三泊四日)
コースタイム:6h 20min(四日目、休憩時間を含む)

大森山:1,078m
五大尊岳:825m
大黒天神岳:573.9m
七越峰:262m

距離:17.668km
累積標高:1,094m
天候:晴れ
気温:?
湿度:?
目的:100kmハイク
単独行

目が覚めたのはこれで何度目だろう。
うつらうつらと微睡み、軽く寝返りを打っては杖が倒れ、ツェルトは潰れた。
もぞもぞと這い出し、引寄せてしまった岩を離しては杖を立ててツェルトを張る。
そんな行為を幾度となく繰り返していた一晩だった。

座りがいい感じに張り綱が張れ深い眠りに落ちて行けたと思ったのもつかの間、外を動き回る気配で目を覚ました。
時刻は3時を少し回ったくらい。夜明までまだまだ時間があるというのに行動を開始する人たちがそこに居た。
もちろんボクは日が登るまで動く気はないのでまた眠りに就く。少しでもゆっくりと休み、少しでも筋肉痛を治しておきたかった。
五時過ぎにもなってようやくツェルトから這い出した。辺りは既に明るく、駐車場に並んでいたテントもひとつ残すだけだった。

ツェルトをたたみ荷物を片づける。出発が遅くなったことだし、本宮までも残すところわずかなので、朝食は行動食で済ませることにした。
荷を背負い森林管理道を緩く上る。思った通りその先にはキジ場があった。その傍らに穴を掘りキジを撃つ。しゃがんでも脚はほとんど痛まなかった。昨晩マッサージしたのが効いたのか単なる時間薬か分からないが、これなら辿りつけそうだと思った。


違和感を感じだしたのは大森山の中腹だった。そして山頂に着く頃には昨日よりも激しい痛みに苦しんでいた。行動食を食べながら地図を開き、大休止を取る。どのルートを通ったら最も楽にバス道に出られるかを探していた。最早1kmたりとも歩けそうになかった。


ここからでは切畑辻から道の駅へ抜けるのが最寄りのエスケープルートだった。
しかしその道は尾根筋を上り下りし足への負担は大きく思えた。
だからボクは、それより楽そうな六道の辻より降りる方を選ぼうと思った。

「やめる理由はいくらでもある しかしその中でいかに続けるか」奥駈を一日半で駆け抜けるカト―さんの顔が浮かんだ。
「やっぱり、みつおはキャベジンやったな」シンちゃんに何を言われるか想像した。
「うん、頑張った、頑張った」エーちゃんはシニカルに慰めてくれるだろう。
「あきらめたら そこで奥駆終了だよ」アンザイせんせーの言葉が響いた。

「せんせーゴールがしたいです」
ボクもまたあきらめの悪い男・・・みっちゃんだった。

俯くと足下に一本の枝が転がっていた
両手に枝を持ち、ヨロヨロとお爺ちゃんのように歩くアベの姿が思い出された。
あのアベがボロボロになり無様な姿を晒しながらも懸命にゴールした姿を思い出していた。

ボクは、やおらその枝を拾い歩き出した。
どうせDNFするにしても先へは進まなければならなかったからだ。

急な下にはロープが張られていた。杖を捨てロープに縋る。そして腕の力だけでズルズルと滑り落ちて行く。
ずっとロープが有れば良いのに、そう思うぐらい腕に頼って降りるのは楽だったし、そう思う以上にボクの脚はボロボロだった。

ロープが途切れると再び寄り縋る杖を探す。そしてまたロープに頼り、その枝を打ち捨てる。そんなことを幾度となく繰り返すうちに何とも頃合いの良い枝を見付けた。握り具合も良くシッカリと体重を支えられる位には頑丈だった。若干短くも感じるが上りに於いてはむしろ都合が良かった。
その杖とすぐに別れてしまうのはあまりに惜しくて、その杖を握りながらロープを下った。
そうしてまた何本か枝を拾っては捨て、捨てては拾うを繰り返すうちにもうひとりの相棒と出会った。こちらはあちらよりも感触は良くはないのだが、長さが絶妙である。上りも下りもオールマイティにこなせる奴だった。

このふたりを抱えながらロープを下りるのは一苦労だったのだが、それを置いて先になど一歩も進めなかった。
六道の辻に着く頃には、彼らと一緒なら最後まで行けると確信していた。


「川を渡るんですか」
大斎原へ下る途中声を掛けられた。
「いえ、渡らないつもりです」
もうイッパイイッパイなボクは、愛想ない言葉を返し追い抜いた。
しかし斜度が急になるといくら相棒付きでも思うように進むことができない。
トレイルの出口近くでまた声を掛けられた。
「僕の友達もみんな川を渡るんですよ ほら」
彼が指し示した先には、川原で靴を脱ぎ裾を捲る人たちの姿があった。
「せっかくだからいってみようかな」


相棒たちと別れを告げ、靴のまま川へ踏みいる。
ワイルドだな、の声を背に、ひとり大斎原にたどり着いた。


一年と四日を掛けたボクの奥駆は今終わった。




---------- 反省会 ----------

目的地に着いたらGPSは切ろう。そのまま電車に乗ったのでかなり上書きされてしまっていた。

遭遇:川を渡るひとたち

呑み:熊野本宮大社→JR紀伊田辺駅→南海和歌山市駅→Jinan三宮店→Jinan王子公園店→モンク

コメント

このブログの人気の投稿

南北ドントリッジ下見

日程:2014/10/08(日帰り) ルート:長峰霊園 - 摩耶東谷 - 山寺尾根 - 掬星台 - 桜谷道 - 徳川道 - 北ドントリッジ - 分水嶺越林道 - 布引道 - 新神戸駅 コースタイム:04h 04min(休憩時間を含む) 距離:13.179km 累積標高:1,054m 天候:晴れ 気温:? 湿度:? 目的:例会山行下見 単独行 例会山行のリーダに指名されたからにはヤラざるを得ない。もちろんやること自体は、ヤブサカデハナイ。 「山羊戸渡」を要望されていたのだが、なんかみんなに過大評価している感、満載なルートなだけに気持ちがどうにもこうにも盛上らない。 って云うか、かつてそんな多大なる期待を受けて連れて行ったのに、その数多過ぎる所期を満たすことなんてとても出来やしなくて、ガッカリルートに認定されたことからも気持ちが萎えてしまう。 結局、余り足を踏み入れないコースを案内しますよ、なんて言葉を濁す。とどのつまり「山羊戸渡」までのアプローチの長さ故にダレタ気持ちを、その先から続くひたすらシンドイだけのアルバイトに過ぎない行程を満足させられるだけの力量を持ち合わせていないってコトだけのことだ。 で、選んだのは、摩耶東谷から南北ドントリッジへと続くルート。 ボクは通常、摩耶東谷を辿る時は、日本三大廃墟として名高い「マヤカン」へと詰めるのだが、一応、立入禁止となっている個人所有の敷地へと不法侵入すべく皆を連れて行くわけにも行かず、かと云って摩耶東谷を通しても、最終的にシンドイだけの藪漕ぎになるので、少しはマシだろうと山寺尾根へ抜けるルートを選択した。 通常、ボクひとりで上るのなら、摩耶東谷を谷通しで行くのだが、同行者が居るとなるとそうも行かない。摩耶東谷より入渓し、堰堤を捲いたところで山寺尾根との分岐へと戻った。そこで堰堤工事を知る。この路へは立入禁止だと知った。 山寺尾根をそのまま辿り、途中の広場から摩耶東谷へ下りる路を調べた。だがそこも、人を連れて行くにはどうかなって、路だった。 だからボクは、谷通しで良いかなって思った。 谷を歩く内は涼しくて良かった。だが、一度沢を外れ尾根を伝うと、その急勾配ゆえに、晩秋とは云え、まだまだ激しく照りつける日差しゆえに、段々と消耗していった。 今日はとても暑い日で、リュックの重

紀ノ川水系下多古川 本谷遡行 一日目 2020年6月6日

六月も初めだというのに全国各地で真夏日をたたき出す猛暑が続くなか、これはもう沢だな、と沢装備を整え出社する。 沢足袋のフェルトを張替えていなかったなと、石井スポーツで草鞋を買って大峰を目指した。 「関西起点 沢登りルート100」が見当たらないのでネットで適当に遡行図を探すが途中までのものしか見つからない。 初心者向けの容易な沢で登山道も沢筋に付いているみたいなことが書かれているから、オンサイトで大丈夫だろうとろくに情報も集めずに旅だった。 これがまたえらい苦労する羽目になろうなどとは何も知らずに。 沢沿いに今なお残る集落を抜け川をまたぐと一軒の建物が目についた。 確か川を渡ってすぐぐらいのところが取付きだったよな、うろ覚えの遡行図を思いだし、簡易浄水場の横から続く踏み跡をなぞって入渓した。 朽ち果てた取水口を越えるとすぐ、滝に出会った。 沢足袋に履き替え、草鞋を結ぶ。妙に鼻緒が短くて履きにくい。 念のためi-padで遡行図を確認する。6mの斜瀑(F1)とある。確かに6mくらいの高さだが、斜瀑というかふつうに滝だ。 直登できなくはないが、シャワークライムを強いられる。 思ったよりも気温が低いし日差しもない。入渓したばかりで体も温まっていないのに滝に打たれるのはいややなと、右岸の草付きを捲く。これが見た目以上に悪い。岩の上にうっすらと土がのり、頼りなげに草が生えている程度だった。 手掛かりになる樹根はおろか、幼木ですらほとんど手の届く範囲にはない。 それでも登れそうなポイントを探し、左へ左へとトラバースしていく。しかし、楽に登れそうなところは見つからず、心が折れた。 しかたがない。直登しようと緩んだ草鞋を結びなおした。 途端に鼻緒が切れた。ブチッとした手触りと共に、ボクの張りつめた気持ちも切れた瞬間だった。 取水口より手前まで戻り、今度は左岸を高捲く。獣道やもしれぬかすかな踏み跡をみつけ、たどる。 F1を越えて再び沢へ下りたいのだが、どれだけ探しても下りられそうなルートがない。捨て縄でも張れば別だが、戻ってこないので回収もできない。 下りられないのなら上を目指すしかない。どこかに登山道がついているかもしれないし、いっそ

武庫川水系西ノ谷遡行

武庫川水系西ノ谷遡行 武庫川水系太多田川赤子谷左俣 日程:2014/07/02-03(一泊二日) ルート:親水広場1613 - 入渓1628 - 霞滝1635 - 桜滝1648 - 満月滝1716 - 尾根1741 - 大峰山1834 コースタイム:2h 21min(休憩時間を含む) 距離:? 累積標高:? 天候:晴れ 気温:? 湿度:? 目的:沢登り 単独行 表六甲の沢の汚さに嫌気が差し、武庫川渓谷なら少しはマシだろうと西の谷を目指した。ついでに裏六甲の沢を幾つか絡めるつもりだ。 家の用事を何かしら片付けていると、なんだかんだでいい時間になってしまっていた。 宝塚でJR(宝塚-武田尾¥200)に乗換え、武田尾の駅より廃線跡を辿る。 放置され風化するに任されたトンネルを二つ抜け、親水広場から櫻の園へと入る。その入口を流れる沢が西の谷だ。 先ずは「もみじの道」を辿り、すぐに出会す堰堤を越えてから入渓する。そこですぐさま身支度を整える。沢足袋に履き替え、ラッシュガードを着る。電子機器はジップロックなり、サラスパの袋なり、LOKSAKなりで包み、ORのドライコンプサミットサックなり、EXPEDなりに突っ込んで完全防水にした。 最初の釜に入り腰まで浸かった。身体に籠った熱が嘘みたいに引いていく。暑さに負けてビールや酎ハイ片手に歩いた街中の暑さが、幻だったかの様に思えてくる。 幾つかの小滝を越え、10m程度の滝(霞滝)に出会った。越えられそうな気もするが、メットをも忘れてしまった単独行なので自重する。そして、定石っぽい右岸のルンゼから上った。そこに掛けられた残置ロープを頼るまでもないが、あったらあったでそれは楽だった。 再び緩い斜瀑を幾つか越えていく。そして幾段かの滝で構成された大滝と出会った。下から見上げても、どこが滝口か定かではない。それほどの連なりだった。 しかしその一段目に取付くには茶色く泡立った釜に浸かるか、無理矢理ヘツッて滝に寄るかしかなかった。もちろんその濁りに浸かりたくも無かったし、スタンスやホールドは随所に見られはするが、万が一落ちてしまった時のことを考えるとヘツるのも二の足を踏む。 結局、またまた右岸より草付きを登り、一段目を越えた辺りでトラバースし、上へと続く残置ロープを跨いで、滝へと戻った。