ルート:岡本八幡神社 - 保久良神社 - 風吹岩 - 保久良神社 - 岡本八幡神社
コースタイム:1h 15min(休憩時間を含む)
風吹岩:447m
距離:?
累積標高:?
天候:晴れ
気温:13℃
湿度:?
目的:晩酌
単独行
「フヒッ?」
思わずキモい声が漏れました。瞬時に全身の毛穴が開きました。そこからなにやらドロッとしたものが溢れ出しました。
それは、振り返ったその先には、ただただ差し伸べられたボクの右手しかなかったからでした。その何かを包み込むかのように丸められた指先から、スロー再生されたかのように、ゆっくりとゆっくりとひとつぶの雫が滴り落ちるだけでした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
いつの間にか駆けだしていました。ただただ、そこから逃げ出したかったのでした。
「う゛もおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
再現ドラマであれば、無駄にスローモーションが掛けられた、そんな間の抜けたくぐもった声になっている場面です。しかし残念ながら、これはTVの中の出来事ではないのでした。
一刻も早く、街中の灯りの下に戻りたい、そう気持ちだけは急き、その足取りは蜂蜜の海を漕ぐかのように感じられました。そして、足はもつれ、浮石を踏み、体勢を崩しました。
強かに打ち付けた尻から脳天へと抜けるように痛みが走ります。とっさに出した右手は泥にまみれ、うっすらと血が滲んでいました。そしてその脈動する焼け付くような痛みこそが、ボクを現実へと引き戻してくれたのでした。
えんやこらせ、と呟きます。どっこいせ、と立ち上がりました。もう、震えは止まっていました。右手の疼きが、さきほどまでの触感を上書きしていました。
アレは何だったのだろうか?アルコールによって増幅された恐怖心の投影?それとも、自分の存在を知らしめたいだけの人成らざるモノ?なんて妄想を膨らませながら、一歩ずつ、しっかりと街を目指し、下り始めたのです。
眼下に拡がる神戸の灯りとその先に拡がる大阪湾へと真っ直ぐに向かう路。LEDに照らし出された平面的でありながら急な階段。二度とあんな痛みを味わうのはゴメンだ、と、ゆっくりと、一歩ずつ、下り続けたのです。
保久良さんへと曲がるカーブ。そちらへと灯りを向けると、ひとつの影を浮かび上がらせました。その影は、その青白い光りを受けた途端、踵を返し、下り始めていったのでした。突然の歌声と共に、です。
「シュニカンシャー シュニカンシャー ハレルヤハームニダー」
明らかに日本人ではない発音。甲高い声が、夜空に響き渡りました。
近寄りたくない、関わりたくない、と思う心とは裏腹に、着実に、急速に、その間隔を縮まっていったのでした。
ボクが、不自然じゃないくらいに、可能な限りに、ゆっくりと歩いているのにも関わらず、縮まってしまうのでした。
「シュニカンシャー シュニカンシャー ハレルヤハームニダー」
何度そのフレーズを聴いたでしょう。その声が大きくなったのは、距離が縮まったからではありません。近付くにつれ、一層声を張り上げ、歌い出したからです。
真っ暗な山道を何の灯りも点けずに登るその姿。変なシミの付いたTシャツに、それ何処で売っているの?と聞きたくなるようなケミカルウォッシュのジーンズ。その存在自体が恐怖以外の何ものでもありませんでした。
ついに、追いついてしまいました。少し立ち止まりますが、意を決して追い抜きます。そのものに背中を向ける恐怖よりも、一刻も早くそれから離れたい、という本能が勝ったからです。
もちろん、走って逃げたりなどしません。そんなことをしようものなら、「ミタナー」とか甲高い声で叫ばれ、後ろから突き落とされたり、刺されたり、金鳥山に埋められているであろう何かのお仲間になってしまうかも知れないからです。
本当は、駆け出したくて仕方がなかったのですが、ボクは偶偶、通りかかっただけですよ、何も見ていませんよ、といった足取りを保ちながら、下りていったのでした。
もしも、もしかして、このblogの更新が滞るなんてことがあったとしたら、ボクは海の向こうの北の方に連れさらわれてしまったのか、金鳥山の辺りを彷徨い続ける存在となっているのかもしれません。
とにかく、夜の山は危険で一杯です。
おしまい?
遭遇:ムカデx1、猫x1(保久良さん)、?x1
コースタイム:1h 15min(休憩時間を含む)
風吹岩:447m
距離:?
累積標高:?
天候:晴れ
気温:13℃
湿度:?
目的:晩酌
単独行
「フヒッ?」
思わずキモい声が漏れました。瞬時に全身の毛穴が開きました。そこからなにやらドロッとしたものが溢れ出しました。
それは、振り返ったその先には、ただただ差し伸べられたボクの右手しかなかったからでした。その何かを包み込むかのように丸められた指先から、スロー再生されたかのように、ゆっくりとゆっくりとひとつぶの雫が滴り落ちるだけでした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
いつの間にか駆けだしていました。ただただ、そこから逃げ出したかったのでした。
「う゛もおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
再現ドラマであれば、無駄にスローモーションが掛けられた、そんな間の抜けたくぐもった声になっている場面です。しかし残念ながら、これはTVの中の出来事ではないのでした。
一刻も早く、街中の灯りの下に戻りたい、そう気持ちだけは急き、その足取りは蜂蜜の海を漕ぐかのように感じられました。そして、足はもつれ、浮石を踏み、体勢を崩しました。
強かに打ち付けた尻から脳天へと抜けるように痛みが走ります。とっさに出した右手は泥にまみれ、うっすらと血が滲んでいました。そしてその脈動する焼け付くような痛みこそが、ボクを現実へと引き戻してくれたのでした。
えんやこらせ、と呟きます。どっこいせ、と立ち上がりました。もう、震えは止まっていました。右手の疼きが、さきほどまでの触感を上書きしていました。
アレは何だったのだろうか?アルコールによって増幅された恐怖心の投影?それとも、自分の存在を知らしめたいだけの人成らざるモノ?なんて妄想を膨らませながら、一歩ずつ、しっかりと街を目指し、下り始めたのです。
眼下に拡がる神戸の灯りとその先に拡がる大阪湾へと真っ直ぐに向かう路。LEDに照らし出された平面的でありながら急な階段。二度とあんな痛みを味わうのはゴメンだ、と、ゆっくりと、一歩ずつ、下り続けたのです。
保久良さんへと曲がるカーブ。そちらへと灯りを向けると、ひとつの影を浮かび上がらせました。その影は、その青白い光りを受けた途端、踵を返し、下り始めていったのでした。突然の歌声と共に、です。
「シュニカンシャー シュニカンシャー ハレルヤハームニダー」
明らかに日本人ではない発音。甲高い声が、夜空に響き渡りました。
近寄りたくない、関わりたくない、と思う心とは裏腹に、着実に、急速に、その間隔を縮まっていったのでした。
ボクが、不自然じゃないくらいに、可能な限りに、ゆっくりと歩いているのにも関わらず、縮まってしまうのでした。
「シュニカンシャー シュニカンシャー ハレルヤハームニダー」
何度そのフレーズを聴いたでしょう。その声が大きくなったのは、距離が縮まったからではありません。近付くにつれ、一層声を張り上げ、歌い出したからです。
真っ暗な山道を何の灯りも点けずに登るその姿。変なシミの付いたTシャツに、それ何処で売っているの?と聞きたくなるようなケミカルウォッシュのジーンズ。その存在自体が恐怖以外の何ものでもありませんでした。
ついに、追いついてしまいました。少し立ち止まりますが、意を決して追い抜きます。そのものに背中を向ける恐怖よりも、一刻も早くそれから離れたい、という本能が勝ったからです。
もちろん、走って逃げたりなどしません。そんなことをしようものなら、「ミタナー」とか甲高い声で叫ばれ、後ろから突き落とされたり、刺されたり、金鳥山に埋められているであろう何かのお仲間になってしまうかも知れないからです。
本当は、駆け出したくて仕方がなかったのですが、ボクは偶偶、通りかかっただけですよ、何も見ていませんよ、といった足取りを保ちながら、下りていったのでした。
もしも、もしかして、このblogの更新が滞るなんてことがあったとしたら、ボクは海の向こうの北の方に連れさらわれてしまったのか、金鳥山の辺りを彷徨い続ける存在となっているのかもしれません。
とにかく、夜の山は危険で一杯です。
おしまい?
遭遇:ムカデx1、猫x1(保久良さん)、?x1
連載面白かったです。
返信削除夜の山は気をつけてください。
ありがとうございます
返信削除これからも気を付けて登っていきたいと思います