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甲斐駒ヶ岳リベンジの失敗の巻の前編

早い眠りからの早い目覚め。
がなり立てる強風に幾度となく目を覚ましたが、睡眠時間は十分だった。
時刻は午前5時まであと少し。外はまだ暗い。

農業従事者の朝は早い。だから暗い内に旅立とうと思っていた。
予定では午前6時よりも前。夜明けはそれより15分は遅いはずだった。
それには未だ早いな、と、寒さに震え、渇いた喉にコーラを流し込み、頭まで寝袋に潜り込んだ。

その暗がりの中、飛行機の轟音を聞いたような気がした。今にして思えば、それは車の走行音だったのかもしれない。それは間もなく訪れる夜明けを告げる響きだったのかもしれない。
とにかく、その時に出発しておけば良かったのだ。

未だ外は暗い。
アプローチでは足元が覚束なくてもいいが、登山道では明るくなっていて欲しいと、もう少しもう少し、と、時間を調整する。

突如、砂利を踏締める音が響き、光が射した。
時刻を確かめると、午前5時半。予想よりもずっと早い従事者の訪れだった。
すぐさま寝袋から飛び出すと、外は仄かに明るくなっていた。

急いで荷物を片付け、名残りを消した。
微かに音楽の響く車の横を、シレッと摺り抜け、昨夜間違え辿ったその農道を引返した。

東の山々が白々とした空にシルエットを刻んでいく。
空は広く晴れ渡り、昨夜の強風が拭い去れぬ雲だけが甲斐駒の頂に引っ掛かっていた。

それにしてもなんでこんなにも薄明が早いのだろう。あんなにも日没が早かったのに。そう考えながら歩いていた。
ここ白州は、神戸と比べてそれほど緯度が高いわけではない。って事は、日照時間が短くて日没が早かったのではなく、東にずれた分早く日が沈み、早く昇るだけだったと思い至った。

実際、調べてみると、神戸 日出6:17 日没18:02 可照時間11:45 甲府 日出6:04 日没17:49 可照時間11:45だった。緯度は一度ほどしか違わず、経度は三度以上も離れていた。それがボクが思うより13分早かった理由だった。

竹宇公民館を過ぎた頃から、チラホラと小雪が舞い始めた。見上げると、もはや、すっかり、すっぽりと雲に包まれ、甲斐駒は姿を消してる。

「天気予報、当たんねーじゃん」
誰にぶつければいいかわからない怒りが湧き上がってきた。天気図を見て、こんな小さな高気圧でこのでかい低気圧を抑えられるんだろうか、って思ったボクのカンの方が正しかった。

仕方なく、町中も真っ白になる吹雪の中「道の駅はくしゅう」を目指した。
今はただ、何処か吹雪に合わずに登れそうな山の情報が欲しかった。

呑み:道の駅はくしゅう、尾白川駐車場

遭遇:ナシ

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