大峯山奥駈道順峯(一日目)
大峯山奥駈道順峯(二日目前編)
大峯山奥駈道順峯(二日目後編)
日程:2012/05/03-05(二泊三日)
ルート:太古の辻 - 前鬼 - 不動七重滝 - 前鬼口 - 下北山スポーツ公園
コースタイム:8h 34min(葛川辻 - 前鬼、休憩時間を含む)
距離:23.191km(葛川辻 - 前鬼)
累積標高:3,331m(葛川辻 - 前鬼)
天候:曇り時々雨霙
気温:?
湿度:?
目的:大峯山奥駈道縦走
単独行
消費カロリー:?kcal
HR:ave?
HR:max?
エスケープルートなのだから楽な路との思い込みがあったが、意外に険しかった。
随所に崩落の痕があり、それによって破壊された梯子が谷底に転がる。あるトコロはそれをなぞって修復し、またあるトコロは新たなルートを築く。そんなまたいつ崩れるやもしれぬルート。それでも吹きっ曝しな稜線を外れて雨風を避けることが出来ただけでもボクは本当に幸せだったし、ボクには帰れるところがあるんだって気持ちでいっぱいだった。
崩れかけた梯子を伝い沢へ下り、ドロドロになった手足を洗う。喉を潤し、ついでに頭から被って顔も洗った。その手に伝わるジャリジャリとした感触は、傘捨山でかいた汗か、天狗の稽古場で流した涙か、吹きっ晒しの稜線で垂らし続けていた洟かは判らない。
前鬼に下りれば集落がある。そこで酒でも買ってテントを張ろう。そんなボクの目論見はアッサリと否定されてしまった。
前鬼には小仲坊と云う宿坊しかなく、酒はおろか自販機の一つもなかった。あるのは公衆電話がポツンとただ一つ。docomoですらここでは圏外だった。
宿坊の軒先で雨をしのぎながらこの先どうするか考えた。
善意の小銭でダイヤルを回したが、ツレの電話は留守電だった。あわよくば迎えに来てもらえないだろうかって甘い考えは、真っ向から否定されてしまった。
電話BOXに置かれた観光案内のパンフレットを広げる。
下北山スポーツ公園キャンプ場というところまで行けば温泉があるらしい。しかもキャンプ場もある。多少の距離を歩かなければならないが、いつ止むかも判らない雨を避け、日暮れまでのふた刻ばかりここで潰すのも馬鹿らしかった。そこで覚悟を決めて傘を差して林道を下った。途中の草むらはツェルトを張るのに都合が良さそうだったが雨を凌ぐことは出来ない。
不動七重の滝はこの雨を受けて、その水量をいつもよりもましているのだろう。遠く眺めるだけでも、そのほとばしる流れの響きが伝わってくる。その滝へと向う遊歩道もある様だが、それを辿るだけの元気はなかった。
なんたって最寄りのバス停まででも12kmも歩かなければならない。
途中、かつて温泉だったものがあったが、今ではただの廃墟だった。
その中なら雨ぐらいは避けられそうだが、とても入りたくなる程に居心地の良さそうな建物ではなかった。
ダム湖の縁をなぞり、向かいたい方角を外れる。間違えてやしないよなって地図を確認し、そこまでの遠さに嫌気が差す。それほどまでに、疲れきった躰に縦走用具一式の重さといくら歩いても辿り着かない道のりは、シシュポスに課せられた苦行ほどに過酷な何の因果か知れないボクへの罰かと思わせた。
それでもバス道まで出れば、ビールの自販機でもあるかも知れないと気を張る。しかしその期待は当り前の様に裏切られ、日に2本しか走らないバスは、あと三時間も来ないのだった。
それだけ待つんだったら歩いた方が早く着く、と更に5kmの距離を加えた。
下北山スポーツ公園キャンプ場は想像以上に充実していた。
併設された「きなりの湯」は、凍えきった躰に温もりを与え、疲れきった両脚を癒した。
周辺にはキャンプ用の食材などを購入できる店が二軒あり、そのうちの一軒でタップリと時間をかけて酒を選び、そのツマミに値下げされた練り物を買った。
キャンプ場は芝張りで水はけが良く、あれだけの雨でもほとんど濡れていない。屋根のあるステージもあったが、ツェルトを張るにはいささか不都合が多かった。コンクリートの床にペグは刺さらないし、柱の間隔は細引きを張り渡すには離れ過ぎていた。
夜空を見上げると、ダムに切取られた星空が広がっている。もう雨は降りそうにない。
芝のサイトに立つ梢を軸にツェルトを張った。
ファミキャンやチャリダーが合せて10組以上は居るだろうか。それでもダムの底に拡がるサイトは、彼らの存在を感じさせない程に広かった。
ガスストーブで練り物を温め、カップ酒を傾けていた。
突然、携帯の着信音が響く。
「予定より早く下りてしまったから明日行く」
そう湯浴み前に打ったメールの返事だった。
「夕方には仕事が終わるから、それ以降で」
これで明日の寝床は確保された。
しかも待合せまでタップリと時間があるから、どこかもうひと山登ろう。
そう思いながら地図を拡げた。
遭遇:ナシ
呑み:下北山スポーツ公園キャンプ場
大峯山奥駈道順峯(二日目前編)
大峯山奥駈道順峯(二日目後編)
日程:2012/05/03-05(二泊三日)
ルート:太古の辻 - 前鬼 - 不動七重滝 - 前鬼口 - 下北山スポーツ公園
コースタイム:8h 34min(葛川辻 - 前鬼、休憩時間を含む)
距離:23.191km(葛川辻 - 前鬼)
累積標高:3,331m(葛川辻 - 前鬼)
天候:曇り時々雨霙
気温:?
湿度:?
目的:大峯山奥駈道縦走
単独行
消費カロリー:?kcal
HR:ave?
HR:max?
エスケープルートなのだから楽な路との思い込みがあったが、意外に険しかった。
随所に崩落の痕があり、それによって破壊された梯子が谷底に転がる。あるトコロはそれをなぞって修復し、またあるトコロは新たなルートを築く。そんなまたいつ崩れるやもしれぬルート。それでも吹きっ曝しな稜線を外れて雨風を避けることが出来ただけでもボクは本当に幸せだったし、ボクには帰れるところがあるんだって気持ちでいっぱいだった。
崩れかけた梯子を伝い沢へ下り、ドロドロになった手足を洗う。喉を潤し、ついでに頭から被って顔も洗った。その手に伝わるジャリジャリとした感触は、傘捨山でかいた汗か、天狗の稽古場で流した涙か、吹きっ晒しの稜線で垂らし続けていた洟かは判らない。
前鬼に下りれば集落がある。そこで酒でも買ってテントを張ろう。そんなボクの目論見はアッサリと否定されてしまった。
前鬼には小仲坊と云う宿坊しかなく、酒はおろか自販機の一つもなかった。あるのは公衆電話がポツンとただ一つ。docomoですらここでは圏外だった。
宿坊の軒先で雨をしのぎながらこの先どうするか考えた。
善意の小銭でダイヤルを回したが、ツレの電話は留守電だった。あわよくば迎えに来てもらえないだろうかって甘い考えは、真っ向から否定されてしまった。
電話BOXに置かれた観光案内のパンフレットを広げる。
下北山スポーツ公園キャンプ場というところまで行けば温泉があるらしい。しかもキャンプ場もある。多少の距離を歩かなければならないが、いつ止むかも判らない雨を避け、日暮れまでのふた刻ばかりここで潰すのも馬鹿らしかった。そこで覚悟を決めて傘を差して林道を下った。途中の草むらはツェルトを張るのに都合が良さそうだったが雨を凌ぐことは出来ない。
不動七重の滝はこの雨を受けて、その水量をいつもよりもましているのだろう。遠く眺めるだけでも、そのほとばしる流れの響きが伝わってくる。その滝へと向う遊歩道もある様だが、それを辿るだけの元気はなかった。
なんたって最寄りのバス停まででも12kmも歩かなければならない。
途中、かつて温泉だったものがあったが、今ではただの廃墟だった。
その中なら雨ぐらいは避けられそうだが、とても入りたくなる程に居心地の良さそうな建物ではなかった。
ダム湖の縁をなぞり、向かいたい方角を外れる。間違えてやしないよなって地図を確認し、そこまでの遠さに嫌気が差す。それほどまでに、疲れきった躰に縦走用具一式の重さといくら歩いても辿り着かない道のりは、シシュポスに課せられた苦行ほどに過酷な何の因果か知れないボクへの罰かと思わせた。
それでもバス道まで出れば、ビールの自販機でもあるかも知れないと気を張る。しかしその期待は当り前の様に裏切られ、日に2本しか走らないバスは、あと三時間も来ないのだった。
それだけ待つんだったら歩いた方が早く着く、と更に5kmの距離を加えた。
下北山スポーツ公園キャンプ場は想像以上に充実していた。
併設された「きなりの湯」は、凍えきった躰に温もりを与え、疲れきった両脚を癒した。
周辺にはキャンプ用の食材などを購入できる店が二軒あり、そのうちの一軒でタップリと時間をかけて酒を選び、そのツマミに値下げされた練り物を買った。
キャンプ場は芝張りで水はけが良く、あれだけの雨でもほとんど濡れていない。屋根のあるステージもあったが、ツェルトを張るにはいささか不都合が多かった。コンクリートの床にペグは刺さらないし、柱の間隔は細引きを張り渡すには離れ過ぎていた。
夜空を見上げると、ダムに切取られた星空が広がっている。もう雨は降りそうにない。
芝のサイトに立つ梢を軸にツェルトを張った。
ファミキャンやチャリダーが合せて10組以上は居るだろうか。それでもダムの底に拡がるサイトは、彼らの存在を感じさせない程に広かった。
ガスストーブで練り物を温め、カップ酒を傾けていた。
突然、携帯の着信音が響く。
「予定より早く下りてしまったから明日行く」
そう湯浴み前に打ったメールの返事だった。
「夕方には仕事が終わるから、それ以降で」
これで明日の寝床は確保された。
しかも待合せまでタップリと時間があるから、どこかもうひと山登ろう。
そう思いながら地図を拡げた。
遭遇:ナシ
呑み:下北山スポーツ公園キャンプ場
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