台高大峯V縦走壹日目
台高大峯V縦走貳日目
日程:2013/11/21-2013/11/24(三泊四日)
ルート:鷲家 - 高見登山口 - 小峠 - 高見山山頂 - 大峠 - 雲ヶ瀬山 - ハンシ山 - 伊勢辻山 - 赤ゾレ山 - 馬駆ヶ場
コースタイム:5h 17min(休憩時間を含む)
高見山:1,248.4m
雲ヶ瀬山:1,075.0m
ハンシ山:1,135m
伊勢辻山:1,290m
距離:10.890km
累積標高:1,813m
天候:晴れのち曇り
気温:?℃
湿度:?
目的:台高大峯縦走
単独行
カトーさんが無泊で計画を立てる奥駆道から小辺路へのVルート(勝手にGreat Vとする)は、ボクにはとても出来そうにないから、台高から大峰へ抜けて戻るVルート(勝手にLittle Vとしておく)を3泊で計画した。それがそもそもの今回の山行の発端だった。
阪急、JR、近鉄、奈良交通バスと乗り継いで訪れた鷲家だったのだが、ここから髙見山までの移動手段がいきなり途絶えてしまっていた。散々ネットで調べ廻ったくせに、勝手にしっかりすべてに於いて接続があるもんだとばかり思い込んでいたコミュニティバスは、まったくすっかり接続なんてもんはまるでなくて、次の出発まで1時間半以上待たなければならない羽目になったのだ。
高見登山口までの距離はざっとみて7km程度。待つ間に十分歩けてしまう距離だった。
国道沿いにそれほど観るべきところもなく、ただただ川沿いに拡がる紅葉の美しさと、頂きを白く染めあげた高見山の優美な姿が、クサクサと棘立つボクの心を安らがせていた。
登山口は民家のすぐ脇を抜ける、らしくない佇まいを見せていた。石段を少し上った祠の前で身仕度を済ませる。とは言ってもさほど仰々しいものでもない。キャノンボールと東神戸マラソンで痛めた左足の裏にネオパスタノーゲンを擦り込み、取っても取っても何処からか湧いてくる砂を靴底から払い、半額で買い求めた五目飯と辛子明太子のオニギリで虫養いをする間に、GPSmap60CSxの補足を済ませただけだ。
気温が低いとは云え、風の抜けない山歩きは暑い。ORのHelium II Jacket、Centrifuge Jacketと脱いでいき、patagoniaのCapilene2 Lightweight Zip-NeckとFTのフラッドラッシュ アクティブスキン ロングスリーブで上っていく。したはTNFのVerb Pant半パンで足元はALTRAのLONE PEAK1.5にDARN TOUGHのNo Show Mesh。アイゼンまでは要らないだろうと、トレッキングシューズを履いてこなかった事が今回最大の致命的な失敗だったわけだが、それはまた後ほど書くとする。
登山口から小峠を抜けて高見山山頂への道は、一部、東海自然歩道との事もあって、石畳みなどで整備されたとても歩き易い路であった。
そこに雪が少ないのが不満であったりもしたのだが、1,000mを越えたあたりからは白く覆われ始めた。
風を避け、山頂避難小屋へ立寄る。先客は2名。
柿ピーを食べていると「国道、歩いていませんでしたか」と声をかけられる。
「ええ」と答えた。
車で高見山へ向かう途中、国道をトボトボと歩くボクの姿を見咎めていたのだ。
「何処から歩いて来はったのですか?」
「鷲家です」
「鷲家?」
「7kmくらい離れた所ですかね」
「早いですね」と感心されるやら呆れられるやら。
「寒くないんですか?」ショートパンツの姿を流石に突っ込まれた。
「寒くなったら上から履きます」マトモな会話になっていないが、雪国の小学生がムキになるくらいボクも半ズボンを愛し、くだらないジョークに大笑いするアメリカ人なみにボクもまた寒さに鈍感なのだ。
そんな会話をしばし交わした後「お先に」と声を掛け席を立つ。
鷲家から歩いて登山口まで来ることなど計画に入れていなかったのだから、あまりノンビリとしている暇などなかった。それでも山頂よりの素晴らしい眺望に、一時、時を忘れる。
大峠へ抜ける急坂を下る。ブナ林の端正な佇まいや、美しく苔むす岩々に目を奪われて路を外れ、引き返したりもした。
ブナの巨木と高見山の霧氷をこよなく愛した女友達がいたが、今ならその想いが痛いほどわかる。
高見山は、それだけを目的に登る価値が十分にある美しき山だった。
大峠に掲げられた小峠方面への全面通行禁止を後目に、本格的に台高縦走路へ突入して行った。
ここから先はエスケープルートも少ない正に秘境と呼ぶに相応しい地となっていく。その前哨戦。甘っちょろいヤツはすっこんでろ、なお試し区間が明神平まで続く。そこから先へは、エスケープするくらいなら大台まで抜ける方がラクと違うか、となる。
ボクもその甘っちょろいヤツの多分に漏れず、この試練を乗り越えられずに明神平より明神谷を下ったワケだが、詳しい話は後々書くとしよう。
大峠から先の路は、森林組合の切り拓いた管理道が交錯し、想像以上に分かりにくくなっていた。それでもおそらくこっちだろうと勘を働かせて進んで行くと、台高北縦走路の看板を見つけ、ああ、こっちで合っていたんだな安心していた。
尾根筋を辿る路を抜ける風は冷たく、2XUのCOMPRESSION CALF GUARDSを履く。本来疲労軽減などに用いるモノだが、ボクにとっては保温や藪漕ぎ時の保護にしか使うことしかないけれど、意外と頼りになるヤツだ。
更に高度を上げ、標高1,000mを越えたあたりから、またちらほらと雪が目に付くようになってきた。そしてそこからは標高が下がることなく徐々に積み上げられて行くかのように、その積雪量も減ることはなく徐々徐々に深さを増して行くのだった。
足の甲くらいまでの積雪はいつしか足首を越え、ハンシ山に辿り着いた頃には体温で解け出した雪が靴下まで沁み渡り、指先を突き刺すように痛めつけていた。
マズイな、このままでは凍傷の心配がある。以前、痛めた左足裏の痺れも酷くなる一方だ。積った雪とその下に拡がる泥に脚を取られ擦りむいた膝も痛む。デジカメのバッテリーも底をついた。GPSのログを落とし忘れていたから容量が半分もない。絶対忘れたらアカンと思っていたグローブを案の定忘れてしもたから、急遽、鶴橋駅前ローソンで購入したショボいもんを着けている。見つからなかったから、ま、いっか、とシルバも持って来なかった。それ以前に紀伊国屋の閉店に間に合わなかったから1/2500の地図すら携えていない。救いはiPodの予備バッテリーを投入したので、思う存分ゲームが愉しめる。本も読める。実際、こうしてblog用の文を書いているってことぐらいだ。そこにはもはや撤退する以外の選択肢などありようもなかった。
撤退するなら明神平以外あり得ない。そしてそこは今夜過ごす予定の地だった。
木々が風を遮り、立ち枯れた草々は柔らかな寝床を用意してくれそうな平場があった。ここにテントを張ったらどうだろう。間違いなく快適な一夜を過ごせるだろう。そう思わせる場所を涙を飲んでやり過ごす。それは、今夜幕営予定地であるところの明神平が目と鼻の先だったからだ。国見山、水無山、その二つの峰さえ越えれば水場の整ったキャンプ適地、明神平が、おいでカモン、と待ち構えていているのだ。
袖引かれる思いを振り切り、国見山へ登りゆく。すぐ目の前には国見山の勇姿、背後に寄り添う水無山の姿があった。しかし夕日の訪れと共に激しさを増した山肌を舐めるような風は、不穏な湿気を含んだ雲を引き連れ、みるみるうちに水無山の姿を隠し包んでいったのだった。たとえ一時とはいえ、あの荒れ狂う吹雪溢れる峰に踏み入ろうなどといった勇気をボクは、バリバリと音を立てながら開く百均で買い求めた小銭入れの片隅にさえも、持ち合わせてなどいなかった。
すぐさま踵を返しその地へ戻った。全くもって姿の見えなくなったその山を見据えながらテントを張った。その選択は今思い返しても正しかったと思っている。
Six Moon Designsのlunar solo LEをHelinoxのTL-115で支え、ペグを6箇所打ち込んだ。土が凍るほど冷え込んでいるわけでもなく、掘らならければならないほどの積雪でもなかったからわけはない。新しく投入した山と道U.L.Pad15s+を敷き、mont・bell U.L.スーパーストレッチダウンハガー#7にwalk about ultracompact 450を重ねる。空いた脚元にはサロモンのSKY30+10を置いた。枕は鶴橋駅前ローソンにて購入したショボいグローブである。
雪に濡れたシューズを脱ぎ、しっかりと濡れていたウールの靴下を履いたままシュラフに潜り込んだ。
それから、良い子のみんながマネをしたらマズイのであまり大きな声では言えないが、テントの中で固形燃料に火を灯した。そしていつも通りにレトルトのパスタソースを温める。事前試験において外気温9℃でも沸騰しなかったのだから、氷点下の情況下で沸くはずもない。ふたつ目の燃料を投入する。再び本を読み始め、これから摂るであろう至福をもたらすはずの温もりの出来上がりをすっかり忘れた頃、その上にかけられたエバニューのチタンコッヘルは、遠く水無山で吹き荒れる吹雪も彼の地にあってはかくあらんとの如く、コトリとも音を立てずにほどほど温もったお湯をテント内に撒き散らしたのであった。タオルで床を拭き、また水を継ぎ足し沸かした。その後、再び、湯をこぼし、タオルで床を拭き、またまた水を継ぎ足した。それを再びこぼし、床をすっかり濡らした後でボクは考えた。
失敗するのは仕様がない。だがそれを繰り返すのはただ単にアホだと。それ以前に重い思いをして持ってきた水がすでに残り少なく、無為に消費することは出来ないのだと。
テント前の雪を掬い、コッヘルに詰め込む。底に残った僅かばかりの水が融解を助けるので水造りは難なく終わる。そのまま沸かし、レトルトのソースにパスタをぶち込んだ。
ここはもう撤退を決め込んでいるので、食材を本能のおもむくままに消費して行く。焼酎200ml、かりんとう一袋、柿ピー4/6袋、牛タン入り魚肉ソーセージ3本、そしてラム350ml。4日分の行動食の多くと、酒の半分以上を消費すれば流石にこの極寒の夜でもすぐさま睡魔は訪れた。途切れ途切れの意識の中、付けっ放しのラジオとヘッデンを消して、永遠とも思える眠りについたのだった。
遭遇:鹿x5
エンドレスリピート
台高大峯V縦走貳日目
日程:2013/11/21-2013/11/24(三泊四日)
ルート:鷲家 - 高見登山口 - 小峠 - 高見山山頂 - 大峠 - 雲ヶ瀬山 - ハンシ山 - 伊勢辻山 - 赤ゾレ山 - 馬駆ヶ場
コースタイム:5h 17min(休憩時間を含む)
高見山:1,248.4m
雲ヶ瀬山:1,075.0m
ハンシ山:1,135m
伊勢辻山:1,290m
距離:10.890km
累積標高:1,813m
天候:晴れのち曇り
気温:?℃
湿度:?
目的:
単独行
カトーさんが無泊で計画を立てる奥駆道から小辺路へのVルート(勝手にGreat Vとする)は、ボクにはとても出来そうにないから、台高から大峰へ抜けて戻るVルート(勝手にLittle Vとしておく)を3泊で計画した。それがそもそもの今回の山行の発端だった。
阪急、JR、近鉄、奈良交通バスと乗り継いで訪れた鷲家だったのだが、ここから髙見山までの移動手段がいきなり途絶えてしまっていた。散々ネットで調べ廻ったくせに、勝手にしっかりすべてに於いて接続があるもんだとばかり思い込んでいたコミュニティバスは、まったくすっかり接続なんてもんはまるでなくて、次の出発まで1時間半以上待たなければならない羽目になったのだ。
高見登山口までの距離はざっとみて7km程度。待つ間に十分歩けてしまう距離だった。
国道沿いにそれほど観るべきところもなく、ただただ川沿いに拡がる紅葉の美しさと、頂きを白く染めあげた高見山の優美な姿が、クサクサと棘立つボクの心を安らがせていた。
登山口は民家のすぐ脇を抜ける、らしくない佇まいを見せていた。石段を少し上った祠の前で身仕度を済ませる。とは言ってもさほど仰々しいものでもない。キャノンボールと東神戸マラソンで痛めた左足の裏にネオパスタノーゲンを擦り込み、取っても取っても何処からか湧いてくる砂を靴底から払い、半額で買い求めた五目飯と辛子明太子のオニギリで虫養いをする間に、GPSmap60CSxの補足を済ませただけだ。
気温が低いとは云え、風の抜けない山歩きは暑い。ORのHelium II Jacket、Centrifuge Jacketと脱いでいき、patagoniaのCapilene2 Lightweight Zip-NeckとFTのフラッドラッシュ アクティブスキン ロングスリーブで上っていく。したはTNFのVerb Pant半パンで足元はALTRAのLONE PEAK1.5にDARN TOUGHのNo Show Mesh。アイゼンまでは要らないだろうと、トレッキングシューズを履いてこなかった事が今回最大の致命的な失敗だったわけだが、それはまた後ほど書くとする。
登山口から小峠を抜けて高見山山頂への道は、一部、東海自然歩道との事もあって、石畳みなどで整備されたとても歩き易い路であった。
そこに雪が少ないのが不満であったりもしたのだが、1,000mを越えたあたりからは白く覆われ始めた。
風を避け、山頂避難小屋へ立寄る。先客は2名。
柿ピーを食べていると「国道、歩いていませんでしたか」と声をかけられる。
「ええ」と答えた。
車で高見山へ向かう途中、国道をトボトボと歩くボクの姿を見咎めていたのだ。
「何処から歩いて来はったのですか?」
「鷲家です」
「鷲家?」
「7kmくらい離れた所ですかね」
「早いですね」と感心されるやら呆れられるやら。
「寒くないんですか?」ショートパンツの姿を流石に突っ込まれた。
「寒くなったら上から履きます」マトモな会話になっていないが、雪国の小学生がムキになるくらいボクも半ズボンを愛し、くだらないジョークに大笑いするアメリカ人なみにボクもまた寒さに鈍感なのだ。
そんな会話をしばし交わした後「お先に」と声を掛け席を立つ。
鷲家から歩いて登山口まで来ることなど計画に入れていなかったのだから、あまりノンビリとしている暇などなかった。それでも山頂よりの素晴らしい眺望に、一時、時を忘れる。
大峠へ抜ける急坂を下る。ブナ林の端正な佇まいや、美しく苔むす岩々に目を奪われて路を外れ、引き返したりもした。
ブナの巨木と高見山の霧氷をこよなく愛した女友達がいたが、今ならその想いが痛いほどわかる。
高見山は、それだけを目的に登る価値が十分にある美しき山だった。
大峠に掲げられた小峠方面への全面通行禁止を後目に、本格的に台高縦走路へ突入して行った。
ここから先はエスケープルートも少ない正に秘境と呼ぶに相応しい地となっていく。その前哨戦。甘っちょろいヤツはすっこんでろ、なお試し区間が明神平まで続く。そこから先へは、エスケープするくらいなら大台まで抜ける方がラクと違うか、となる。
ボクもその甘っちょろいヤツの多分に漏れず、この試練を乗り越えられずに明神平より明神谷を下ったワケだが、詳しい話は後々書くとしよう。
大峠から先の路は、森林組合の切り拓いた管理道が交錯し、想像以上に分かりにくくなっていた。それでもおそらくこっちだろうと勘を働かせて進んで行くと、台高北縦走路の看板を見つけ、ああ、こっちで合っていたんだな安心していた。
尾根筋を辿る路を抜ける風は冷たく、2XUのCOMPRESSION CALF GUARDSを履く。本来疲労軽減などに用いるモノだが、ボクにとっては保温や藪漕ぎ時の保護にしか使うことしかないけれど、意外と頼りになるヤツだ。
更に高度を上げ、標高1,000mを越えたあたりから、またちらほらと雪が目に付くようになってきた。そしてそこからは標高が下がることなく徐々に積み上げられて行くかのように、その積雪量も減ることはなく徐々徐々に深さを増して行くのだった。
足の甲くらいまでの積雪はいつしか足首を越え、ハンシ山に辿り着いた頃には体温で解け出した雪が靴下まで沁み渡り、指先を突き刺すように痛めつけていた。
マズイな、このままでは凍傷の心配がある。以前、痛めた左足裏の痺れも酷くなる一方だ。積った雪とその下に拡がる泥に脚を取られ擦りむいた膝も痛む。デジカメのバッテリーも底をついた。GPSのログを落とし忘れていたから容量が半分もない。絶対忘れたらアカンと思っていたグローブを案の定忘れてしもたから、急遽、鶴橋駅前ローソンで購入したショボいもんを着けている。見つからなかったから、ま、いっか、とシルバも持って来なかった。それ以前に紀伊国屋の閉店に間に合わなかったから1/2500の地図すら携えていない。救いはiPodの予備バッテリーを投入したので、思う存分ゲームが愉しめる。本も読める。実際、こうしてblog用の文を書いているってことぐらいだ。そこにはもはや撤退する以外の選択肢などありようもなかった。
撤退するなら明神平以外あり得ない。そしてそこは今夜過ごす予定の地だった。
木々が風を遮り、立ち枯れた草々は柔らかな寝床を用意してくれそうな平場があった。ここにテントを張ったらどうだろう。間違いなく快適な一夜を過ごせるだろう。そう思わせる場所を涙を飲んでやり過ごす。それは、今夜幕営予定地であるところの明神平が目と鼻の先だったからだ。国見山、水無山、その二つの峰さえ越えれば水場の整ったキャンプ適地、明神平が、おいでカモン、と待ち構えていているのだ。
袖引かれる思いを振り切り、国見山へ登りゆく。すぐ目の前には国見山の勇姿、背後に寄り添う水無山の姿があった。しかし夕日の訪れと共に激しさを増した山肌を舐めるような風は、不穏な湿気を含んだ雲を引き連れ、みるみるうちに水無山の姿を隠し包んでいったのだった。たとえ一時とはいえ、あの荒れ狂う吹雪溢れる峰に踏み入ろうなどといった勇気をボクは、バリバリと音を立てながら開く百均で買い求めた小銭入れの片隅にさえも、持ち合わせてなどいなかった。
すぐさま踵を返しその地へ戻った。全くもって姿の見えなくなったその山を見据えながらテントを張った。その選択は今思い返しても正しかったと思っている。
Six Moon Designsのlunar solo LEをHelinoxのTL-115で支え、ペグを6箇所打ち込んだ。土が凍るほど冷え込んでいるわけでもなく、掘らならければならないほどの積雪でもなかったからわけはない。新しく投入した山と道U.L.Pad15s+を敷き、mont・bell U.L.スーパーストレッチダウンハガー#7にwalk about ultracompact 450を重ねる。空いた脚元にはサロモンのSKY30+10を置いた。枕は鶴橋駅前ローソンにて購入したショボいグローブである。
雪に濡れたシューズを脱ぎ、しっかりと濡れていたウールの靴下を履いたままシュラフに潜り込んだ。
それから、良い子のみんながマネをしたらマズイのであまり大きな声では言えないが、テントの中で固形燃料に火を灯した。そしていつも通りにレトルトのパスタソースを温める。事前試験において外気温9℃でも沸騰しなかったのだから、氷点下の情況下で沸くはずもない。ふたつ目の燃料を投入する。再び本を読み始め、これから摂るであろう至福をもたらすはずの温もりの出来上がりをすっかり忘れた頃、その上にかけられたエバニューのチタンコッヘルは、遠く水無山で吹き荒れる吹雪も彼の地にあってはかくあらんとの如く、コトリとも音を立てずにほどほど温もったお湯をテント内に撒き散らしたのであった。タオルで床を拭き、また水を継ぎ足し沸かした。その後、再び、湯をこぼし、タオルで床を拭き、またまた水を継ぎ足した。それを再びこぼし、床をすっかり濡らした後でボクは考えた。
失敗するのは仕様がない。だがそれを繰り返すのはただ単にアホだと。それ以前に重い思いをして持ってきた水がすでに残り少なく、無為に消費することは出来ないのだと。
テント前の雪を掬い、コッヘルに詰め込む。底に残った僅かばかりの水が融解を助けるので水造りは難なく終わる。そのまま沸かし、レトルトのソースにパスタをぶち込んだ。
ここはもう撤退を決め込んでいるので、食材を本能のおもむくままに消費して行く。焼酎200ml、かりんとう一袋、柿ピー4/6袋、牛タン入り魚肉ソーセージ3本、そしてラム350ml。4日分の行動食の多くと、酒の半分以上を消費すれば流石にこの極寒の夜でもすぐさま睡魔は訪れた。途切れ途切れの意識の中、付けっ放しのラジオとヘッデンを消して、永遠とも思える眠りについたのだった。
遭遇:鹿x5
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