OLYMPUS OM-D E-M1 Panasonic Lumix G 14mm F2.5 ASPH
薄明が始まり、身を絞めつける肌寒さはいつの間にか去っていた。
腰の痛みを気にしながら恐る恐るハンモックからおりてみる。痛みを感じない腰の捻りかたを探りながら、だ。
昨晩、寒さのあまり手探りで探したオールウェザーブランケットは1メートルほど離れた場所に落ちている。そばには900ml入の焼酎の紙パックが空で転がっていた。いつも通りの寝落ちだった。つまりそういうことだ。記憶がないのも当然のことだった。
テン場を後にしたのは午前5時をわずかに回った頃。山深い渓谷の底とはいえ、すでに足元はしっかりと見えるほどには明るくなっている。そこでここ連日の暑さを思う。それを思い返し、その事を避けたいと思う。そこからボクは日が昇り、少しづつ気温が上がる前にわずかでも先へ進んでおくべきだ、と考えた。
すぐ上流にある8m程度の滝を捲き、しばらくはアプローチシューズと云うかベアフットトレランシューズで、右岸、左岸と渡渉しながら進んでいく。いよいよ水に入らなければ進めないぞ、という処まできて、ようやくラッシュガードを着用し、少し湿った沢足袋に履き替えた。
遡行図に「平凡」と書かれた区間は、観るべき雄大な滝がない、だとか、目を見張るべき荘厳なゴルジュがない、だとか、云うだけで、静粛な沢様を保つ美しき渓谷が続いていた。
再び遡行図を見た。『関西起点沢登りルート100』のコピーを見直した。そこからこの先の沢のあるべき姿を想像した。
そこに拡がる姿は、ボクがそこから読み解く姿とはまったく異なっていたが、それはボクを失望させることなど何もなく、いつまでもその世界が続けばいいと思わせていた。と云うのはウソだ。いや、ウソではないが、ウソでこそないのだが、早くノウナシ滝へたどり着きたい、その姿を見上げたい、と云う気持ちは、抑えようもなく湧き上がってくるのだった。
滝口からほとばしる水の響きを聞くたびに、もうすぐノウナシ滝にたどり着くのだろうという期待を膨らませては、何度その期待を裏切られてきたのだろう。
ようやくその姿を目にした時には歓びにうち震えると云うよりも、これから先に続く道程の長さに絶望した。
遡行図はそのままのスケールで描かれてはいない事は分かっていても、この先の長さを思うと不安になる。
それと云うのも、昨日、ハンモックから落ちて打ちつけた腰が何かするたびにシクシク痛み、思うようなムービングができないのと、どうやら何処かでグローブを落としてしまったらしく、それが見当たらないから、素手でクライムし続けなければならないからだった。
ノウナシ滝を捲くルートを、ボクはすっかり勘違いしていた。間違えて覚えていた。ノウナシ滝はノウナシ谷へ流れ込む滝で、本流ではないと思っていた。何故そう覚えていたのだろうか。そう思い込んでいたのだろうか。ノウナシ滝を、ノウナシ谷の名を冠したその滝を、何故、それが本流ではないなどと思い違えていたのだろうか。少しでも考えれば判ることだ。ちゃんと遡行図を見れば明かなことだった。
思い込みとは恐ろしい。その地形をいくら観察しようと、その遡行図をいくらその地形と照らし合せようと、ノウナシ滝はノウナシ谷を代表する滝であろうとも、象徴であったとしても、それがノウナシ谷の滝ではないと、そう思い込んでいたのだった。そう、つまりボクはそれほどまでにノウナシだったのだ。
ノウナシ滝の、その左岸側の支流を辿るように進む。そしてボクはそちらの沢を遡行するような素振りを見せたが、もう一度冷静に考え、周囲の地形を観察し、遡行図に書かれた文言を吟味し、ようやく正しい道を見つけた。ノウナシ滝が本流だと云うことにようやく気づき、滝と沢に挟まれた尾根を上ることに決めたのだ。
遡行図には、明らかにノウナシ滝が、その先の流れが本流であり、その左岸から、そこからリッジをなぞって、上がることを示していたのだった。
登り始めて間もなく、明らかに最近つけられたであろう踏み跡を見つけた。それは今後、幾度となくその跡を辿り、幾度となくそこを離れ、幾度となく再びボクの行先を指し示してくれた、そんなありがたい道標だった。
つづら折りにその跡を追いかけ、尾根へ出た。そこから更に高捲き、滝口の先のさらに先を降り始め、さらにその先に新たにもう一つの滝を見つけて、下りてはすぐに捲き上がるのもアホらしく思い、そのままヘツリ続けたのだった。
千手滝。美しいその滝は下からはうかがい知れないが、馬頭滝を上に従えた二段滝なのだと云う。
オンサイトでは取り付きが分からず、再び『関西起点沢登りルート100』を開く。ジップロックに包まれたそのコピーをポケットから取り出して、そこに書かれた解説を注意深く読み直した。
「右側のルンゼに取り付いて壁を高捲く」
ルンゼという事は、滝の左岸のあの傾斜を登るワケか。滝壺を、この釜を泳ぎ渡って、ルンゼに取り付くワケか。
「錯綜する踏跡に惑わされて高巻きしすぎると、馬頭滝を見ずに上流に出てしまう」
という事は、滝のすぐ横を上るべきなのだろう。下からは見る分にはルンゼの中央付近が楽そうに見えるが、そこは正しいルートではないのだろう。上段の馬頭滝を眺望したいのであれば、その登りやすそうなルートは違うのだろう。そちらから登れば馬頭滝まで高捲いてしまうのだろう。
今度こそボクは思い込みなく、冷静に沈着に、遡行図に書かれているそのままの事を、その地形をちゃんと観察し、ちゃんと照らし合せたうえで、そう正しく結論付けた。
日が昇って間もない時刻。気温も水温もそれほど上がってはいなくて、泳ぎは嫌だなと思っていたが、色々と覚悟を決めて飛び込んだ。その冷たさだとか、その後に続くであろう困難さだとかを飲み込んで、飛び込んだのだった。
いざルンゼに取り付いてみると見た目ほどの傾斜ではなく、スタンスもしっかりとしていた。滝のちょうど中間地点位まで、ではあるが。
そこから先は傾斜を増し、立ったまま上る事はできない。クラックを利用し、手とつま先を差し込みながら、指先から掌までのフリクションを利かせながら、登っていく。
そしてその先を折り返しだ。10㎝ほどの踏み跡を辿り、再び滝の方へ引き返していった。
「落ちたら死ぬ、落ちたら死ぬ」
フリーソロなのだ。ビレイなどしていないのだ。だから絶対に落ちるわけにはいかないのだ。
集中力を切らさぬように、慎重に、少しづつ、一歩一歩進んでいく。そして馬頭滝の中ほどの、滝壺を、大きな釜を見下ろす尾根に出た。そこから釜へ下りれるのかもしれないが、そこまでの気力はなかった。既に集中力を切らしている。セルフビレイを取ろうかと思った。取らなくてもいいだろうと思い直した。ここには50㎝四方ほどの平場がある。それは三脚を立てて、滝壺に落ちることもなく、無事に撮影を済ますには十分な広さだった。
そして一刻も早くこの不安定な立場から、馬頭滝を撮影すると云う本来の目的を果たして、地に足のついたその場所へと戻りたかった。
三脚を取出しカメラを据付けるなか、手のひらに痛みを感じた。
クラックを登っている時の傷だろう。鋭く尖った岩で切ったのだろう。グローブをしていなかったせいてあろう。アドレナリンをたれ流していたから痛みに気づかなかっただけなのだ。
この先の写真はほとんどない。バッテリーが切れたからだ。予備に用意していた二つのバッテリーには、これっぽちも充電されていなかったからだ。古すぎるバッテリーも、中華製互換バッテリーもまったく充電されていなかったからだ。
だからミラーレスは嫌いだ。一眼レフでは二泊三日だろうと、五泊六日だろうと、バッテリー交換などせずとももつのに、ミラーレスでは一泊二日ですらもたない。
この先に続く美しき滝や、健やかなるナメを撮れなかった事は残念でしょうがない。この先にも美しき滝はあったのだ。素晴らしきナメ床も続いていたのだ。
ガラケーにもカメラは付いている。その事に気付いたのは、そういえばガラケーでも時間を確認できるのだと、電源を入れた時だった。
その時まで、まさかの遭難した時の、いざという時にしか使いようのない山奥でも電波を捕らえられる可能性の高いドコモの、わずかでも荷物を減らしたくても持ち歩き続けてきたお守りのようなそのガラケーに、その他の用途などあろうとは、実にその時まで気づきもしなかったのだ。
ザックのサイドポケットにグローブが入っていた。その事に気付いたのは、山上ヶ岳の宿坊でビールを飲み干しながら寺男?と会話を交わし、予想外に多くすれ違う修験者達と「ようお参り」の挨拶を交わし、むらがる虻を交わし続け、女人結界をくぐったのちに、そこのベンチでザックを下して、上着を着替えたときだった。もはや使う必要もなくなったあとにだった。手を切る必要などどこにもなかったのだ。本当にボクはほとほとノウナシだったのだ。
ここからはボクが得るべき教訓は「思い込むな、確認しろ。記憶はいつも自分を騙す」ということだ。
いつか命を落とす前に、その事を魂に刻み込んでおかなければならない。
ノウナシ滝
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千手滝
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馬頭滝
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この写真を最後にバッテリーが切れる
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日程:2018/07/18-19(一泊二日)
ルート:泊適地発0519 - 給水地点0606 - 2条滝0614 - ノウナシ滝0644 - 千手滝0719 - 馬頭滝0739 - 脇ノ宿谷水源0933 - 奥駆道0945 - 小笹宿0957 - 地蔵1011 - 山上ヶ岳1031 - 喜蔵院1040 - 西の覗1101 - 陀羅尼助茶屋1116 - 洞辻茶屋1123 - 大峯山女人結界門1218 - 洞川温泉
コースタイム: 6h.59min (休憩時間を含む)
山上ヶ岳 1,719m 日本三百名山
地形図:弥山、洞川
距離:?km
累積標高:?m
天候:晴れ
気温:?℃
湿度:?%
目的:神童子谷遡行
単独行
奈良交通バス洞川温泉 - 西迎院前 ¥1,250
近鉄下市口 - 近鉄八尾 ¥780
JR八尾 - 大阪 ¥300
喜蔵院(山上ヶ岳)★★★★
中華料理 彰武(洞川温泉)★★★
戸井酒店(八尾)★★★★
村営洞川温泉センター¥600 11:00~20:00 水曜休
薄明が始まり、身を絞めつける肌寒さはいつの間にか去っていた。
腰の痛みを気にしながら恐る恐るハンモックからおりてみる。痛みを感じない腰の捻りかたを探りながら、だ。
昨晩、寒さのあまり手探りで探したオールウェザーブランケットは1メートルほど離れた場所に落ちている。そばには900ml入の焼酎の紙パックが空で転がっていた。いつも通りの寝落ちだった。つまりそういうことだ。記憶がないのも当然のことだった。
テン場を後にしたのは午前5時をわずかに回った頃。山深い渓谷の底とはいえ、すでに足元はしっかりと見えるほどには明るくなっている。そこでここ連日の暑さを思う。それを思い返し、その事を避けたいと思う。そこからボクは日が昇り、少しづつ気温が上がる前にわずかでも先へ進んでおくべきだ、と考えた。
すぐ上流にある8m程度の滝を捲き、しばらくはアプローチシューズと云うかベアフットトレランシューズで、右岸、左岸と渡渉しながら進んでいく。いよいよ水に入らなければ進めないぞ、という処まできて、ようやくラッシュガードを着用し、少し湿った沢足袋に履き替えた。
遡行図に「平凡」と書かれた区間は、観るべき雄大な滝がない、だとか、目を見張るべき荘厳なゴルジュがない、だとか、云うだけで、静粛な沢様を保つ美しき渓谷が続いていた。
再び遡行図を見た。『関西起点沢登りルート100』のコピーを見直した。そこからこの先の沢のあるべき姿を想像した。
そこに拡がる姿は、ボクがそこから読み解く姿とはまったく異なっていたが、それはボクを失望させることなど何もなく、いつまでもその世界が続けばいいと思わせていた。と云うのはウソだ。いや、ウソではないが、ウソでこそないのだが、早くノウナシ滝へたどり着きたい、その姿を見上げたい、と云う気持ちは、抑えようもなく湧き上がってくるのだった。
滝口からほとばしる水の響きを聞くたびに、もうすぐノウナシ滝にたどり着くのだろうという期待を膨らませては、何度その期待を裏切られてきたのだろう。
ようやくその姿を目にした時には歓びにうち震えると云うよりも、これから先に続く道程の長さに絶望した。
遡行図はそのままのスケールで描かれてはいない事は分かっていても、この先の長さを思うと不安になる。
それと云うのも、昨日、ハンモックから落ちて打ちつけた腰が何かするたびにシクシク痛み、思うようなムービングができないのと、どうやら何処かでグローブを落としてしまったらしく、それが見当たらないから、素手でクライムし続けなければならないからだった。
ノウナシ滝を捲くルートを、ボクはすっかり勘違いしていた。間違えて覚えていた。ノウナシ滝はノウナシ谷へ流れ込む滝で、本流ではないと思っていた。何故そう覚えていたのだろうか。そう思い込んでいたのだろうか。ノウナシ滝を、ノウナシ谷の名を冠したその滝を、何故、それが本流ではないなどと思い違えていたのだろうか。少しでも考えれば判ることだ。ちゃんと遡行図を見れば明かなことだった。
思い込みとは恐ろしい。その地形をいくら観察しようと、その遡行図をいくらその地形と照らし合せようと、ノウナシ滝はノウナシ谷を代表する滝であろうとも、象徴であったとしても、それがノウナシ谷の滝ではないと、そう思い込んでいたのだった。そう、つまりボクはそれほどまでにノウナシだったのだ。
ノウナシ滝の、その左岸側の支流を辿るように進む。そしてボクはそちらの沢を遡行するような素振りを見せたが、もう一度冷静に考え、周囲の地形を観察し、遡行図に書かれた文言を吟味し、ようやく正しい道を見つけた。ノウナシ滝が本流だと云うことにようやく気づき、滝と沢に挟まれた尾根を上ることに決めたのだ。
遡行図には、明らかにノウナシ滝が、その先の流れが本流であり、その左岸から、そこからリッジをなぞって、上がることを示していたのだった。
登り始めて間もなく、明らかに最近つけられたであろう踏み跡を見つけた。それは今後、幾度となくその跡を辿り、幾度となくそこを離れ、幾度となく再びボクの行先を指し示してくれた、そんなありがたい道標だった。
つづら折りにその跡を追いかけ、尾根へ出た。そこから更に高捲き、滝口の先のさらに先を降り始め、さらにその先に新たにもう一つの滝を見つけて、下りてはすぐに捲き上がるのもアホらしく思い、そのままヘツリ続けたのだった。
千手滝。美しいその滝は下からはうかがい知れないが、馬頭滝を上に従えた二段滝なのだと云う。
オンサイトでは取り付きが分からず、再び『関西起点沢登りルート100』を開く。ジップロックに包まれたそのコピーをポケットから取り出して、そこに書かれた解説を注意深く読み直した。
「右側のルンゼに取り付いて壁を高捲く」
ルンゼという事は、滝の左岸のあの傾斜を登るワケか。滝壺を、この釜を泳ぎ渡って、ルンゼに取り付くワケか。
「錯綜する踏跡に惑わされて高巻きしすぎると、馬頭滝を見ずに上流に出てしまう」
という事は、滝のすぐ横を上るべきなのだろう。下からは見る分にはルンゼの中央付近が楽そうに見えるが、そこは正しいルートではないのだろう。上段の馬頭滝を眺望したいのであれば、その登りやすそうなルートは違うのだろう。そちらから登れば馬頭滝まで高捲いてしまうのだろう。
今度こそボクは思い込みなく、冷静に沈着に、遡行図に書かれているそのままの事を、その地形をちゃんと観察し、ちゃんと照らし合せたうえで、そう正しく結論付けた。
日が昇って間もない時刻。気温も水温もそれほど上がってはいなくて、泳ぎは嫌だなと思っていたが、色々と覚悟を決めて飛び込んだ。その冷たさだとか、その後に続くであろう困難さだとかを飲み込んで、飛び込んだのだった。
いざルンゼに取り付いてみると見た目ほどの傾斜ではなく、スタンスもしっかりとしていた。滝のちょうど中間地点位まで、ではあるが。
そこから先は傾斜を増し、立ったまま上る事はできない。クラックを利用し、手とつま先を差し込みながら、指先から掌までのフリクションを利かせながら、登っていく。
そしてその先を折り返しだ。10㎝ほどの踏み跡を辿り、再び滝の方へ引き返していった。
「落ちたら死ぬ、落ちたら死ぬ」
フリーソロなのだ。ビレイなどしていないのだ。だから絶対に落ちるわけにはいかないのだ。
集中力を切らさぬように、慎重に、少しづつ、一歩一歩進んでいく。そして馬頭滝の中ほどの、滝壺を、大きな釜を見下ろす尾根に出た。そこから釜へ下りれるのかもしれないが、そこまでの気力はなかった。既に集中力を切らしている。セルフビレイを取ろうかと思った。取らなくてもいいだろうと思い直した。ここには50㎝四方ほどの平場がある。それは三脚を立てて、滝壺に落ちることもなく、無事に撮影を済ますには十分な広さだった。
そして一刻も早くこの不安定な立場から、馬頭滝を撮影すると云う本来の目的を果たして、地に足のついたその場所へと戻りたかった。
三脚を取出しカメラを据付けるなか、手のひらに痛みを感じた。
クラックを登っている時の傷だろう。鋭く尖った岩で切ったのだろう。グローブをしていなかったせいてあろう。アドレナリンをたれ流していたから痛みに気づかなかっただけなのだ。
この先の写真はほとんどない。バッテリーが切れたからだ。予備に用意していた二つのバッテリーには、これっぽちも充電されていなかったからだ。古すぎるバッテリーも、中華製互換バッテリーもまったく充電されていなかったからだ。
だからミラーレスは嫌いだ。一眼レフでは二泊三日だろうと、五泊六日だろうと、バッテリー交換などせずとももつのに、ミラーレスでは一泊二日ですらもたない。
この先に続く美しき滝や、健やかなるナメを撮れなかった事は残念でしょうがない。この先にも美しき滝はあったのだ。素晴らしきナメ床も続いていたのだ。
ガラケーにもカメラは付いている。その事に気付いたのは、そういえばガラケーでも時間を確認できるのだと、電源を入れた時だった。
その時まで、まさかの遭難した時の、いざという時にしか使いようのない山奥でも電波を捕らえられる可能性の高いドコモの、わずかでも荷物を減らしたくても持ち歩き続けてきたお守りのようなそのガラケーに、その他の用途などあろうとは、実にその時まで気づきもしなかったのだ。
ザックのサイドポケットにグローブが入っていた。その事に気付いたのは、山上ヶ岳の宿坊でビールを飲み干しながら寺男?と会話を交わし、予想外に多くすれ違う修験者達と「ようお参り」の挨拶を交わし、むらがる虻を交わし続け、女人結界をくぐったのちに、そこのベンチでザックを下して、上着を着替えたときだった。もはや使う必要もなくなったあとにだった。手を切る必要などどこにもなかったのだ。本当にボクはほとほとノウナシだったのだ。
ここからはボクが得るべき教訓は「思い込むな、確認しろ。記憶はいつも自分を騙す」ということだ。
いつか命を落とす前に、その事を魂に刻み込んでおかなければならない。
ノウナシ滝
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千手滝
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馬頭滝
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この写真を最後にバッテリーが切れる
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日程:2018/07/18-19(一泊二日)
ルート:泊適地発0519 - 給水地点0606 - 2条滝0614 - ノウナシ滝0644 - 千手滝0719 - 馬頭滝0739 - 脇ノ宿谷水源0933 - 奥駆道0945 - 小笹宿0957 - 地蔵1011 - 山上ヶ岳1031 - 喜蔵院1040 - 西の覗1101 - 陀羅尼助茶屋1116 - 洞辻茶屋1123 - 大峯山女人結界門1218 - 洞川温泉
コースタイム: 6h.59min (休憩時間を含む)
山上ヶ岳 1,719m 日本三百名山
地形図:弥山、洞川
距離:?km
累積標高:?m
天候:晴れ
気温:?℃
湿度:?%
目的:神童子谷遡行
単独行
奈良交通バス洞川温泉 - 西迎院前 ¥1,250
近鉄下市口 - 近鉄八尾 ¥780
JR八尾 - 大阪 ¥300
喜蔵院(山上ヶ岳)★★★★
中華料理 彰武(洞川温泉)★★★
戸井酒店(八尾)★★★★
村営洞川温泉センター¥600 11:00~20:00 水曜休
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