スキップしてメイン コンテンツに移動

雲上の湯

八ヶ岳
権現岳
雲上の湯

ルート:天の河原 - 前三ツ頭 - 三ツ頭 - 権現岳 - キレット小屋 - 赤岳 - 三叉峰 - 硫黄岳小屋 - 硫黄岳 - 本沢温泉
コースタイム:10h 05min(休憩時間を含む)

前三ツ頭 2,364m
三ツ頭 2,580m
権現岳 2,715m
赤岳 2,899 m
硫黄岳 2,760m

日程20130815-16(二日目)
距離:?km
累積標高:?m
天候:晴れのち曇りところにより雷雨
気温:?
湿度:?
目的:日本最高処野天風呂
単独行

赤岳
10:20

赤岳に近づくと、なぜそれが赤岳と呼ばれるかがはっきりと分かる。ほら、この山をなんて呼ぶって言われたら、きっと赤岳って名付けたであろうほどに赤かった。

赤々とガレた斜面をペンキの印を頼りにルートを刻む。赤岳は頂きの見えない急坂が続いていた。終わりの知れぬルートは見た目以上にキツイ。「八ヶ岳など全山縦走したところで対した距離ではないのだから」と言訳をし、休憩を入れながらノンビリと進むことにした。

斜面に張り出した岩に腰を下ろし、お茶を煎れようとストーブを取り出す。しかし天の河原でさえ点きの悪かった電子ライターは、標高を更に重ねたこの地に於いては全く点きそうな気配すら見せなかった。いつもならフリント式のライターやマッチを予備で持ち歩いているのだが、いつも通りに何かしら忘れるクセを今回もまた否応無く発揮し、それが今回はたまたまマッチその他だったわけだ。
100回くらい重い着火ボタンを押し下げ一度たりとも点かないのを確認して、ようやく諦めがつき、雨水を啜った。


三叉峰
11:37
赤岳頂上山荘でバッチを買い、天望荘で生ビールを求めるも宿泊客以外には呑ませられないと断られ、昼食も摂れずに硫黄岳山荘を目指した。
横岳を越えカニの横這いを抜ける。

三ツ頭より眺めた山頂を覆う雲はいよいよ勢力を増し、この辺り一面まで覆い尽くすほどになっていた。そこに眺望はない。でも関西には無い森林限界以上の景観は、そこはかとなく懐かしくもあり、ゆっくりと楽しむだけでも面白くもあった。

硫黄岳小屋
12:09

キレット小屋での温いビール、赤岳天望荘での拒否、その不満を解消するかのように硫黄岳小屋でキンキンに冷えた「よなよなエール」(¥550)を買い求めた。
外に並べられたテーブルに缶を置き、添えられた椅子に腰を下ろした。見上げれば晴天が拡がる。しかし斜面の下には雲海が拡がっていた。何処からとも無く雷鳴が響く。こっちに来るなよと思いながら、自家野菜おみそ汁(¥300)を追加した。
ポツリポツリとテーブルを雨が打ち始める。小屋の中に入り、雨が降ってきた、と告げる。小屋の管理人達がオイルステインで仕上げていた木材を急いで取り入れた。
大したことないけど、なんて云っているうちに、雨煙をあげるほどそれは激しくなっていた。
次々と雨を避けたハイカーが訪れる。管理人は濡れた体を温めるさせるために薪ストーブに火を入れる。それでも雨に打たれていない身体も冷え切るほどに気温は下がり続けていた。
その雨を避けた人々の中で、一際目を引く女性がいた。所謂、山ガール的な装いでなく山岳会的な感じだ。ファイントラックのパンツにマムートのソフトシェル、そんな実用一辺倒な出で立ちがさらに彼女を魅力的に見せていた。撮影かな、と周りを見回した。しかしそんなものは当然無かった。

雨が小降りになるまで一時間近く待った。それはここでもまた、いつも通りに何か忘れるクセを今回もまた否応無く発揮し、雨具まで忘れてきたからだった。

硫黄岳
13:35

「ケルンを辿っていってください」そう教えられた。硫黄岳は漠然と拡がった尾根を登るために目印がなく、濃霧が立ち込める中ではケルンを辿るしか術がないと言う。
両脇は断崖絶壁が締める。間違ってそこに足を踏み入れたのなら命は無いであろう。だからこのような状況に遭ってはケルンを辿らなければならないのだ。

爆裂火口は雲に包まれていた。それを見下ろしたかったってのも八ヶ岳を上ったって理由のひとつではあるが、それは適う事はなかった。
急いで硫黄岳を下る。ここから先は霧も立ち込めてはいないのだが、雷雲を避けるため急いだのだ。

本沢温泉
14:35
心配した雷雲もここまで追いかけては来なかった。

登山道より見下ろす沢。その一角に目指す日本最高所の野天風呂はある。山小屋で入浴料(¥600)を払い、いそいそと野天風呂を目指した。
途中にツェルトを張るのに良さそうな平場があるのだが、やっぱり張ったらあかんよなあ、キャンプ場があるのに、人通りも多いしなあ、と諦める。

野天風呂には50代くらいの男性がひとり。挨拶を交わし、風呂へ入った。会社に泊り込みだったりでの三日ぶりの温泉は云うまでも無く最高だった。それはもう烏の行水なボクが一時間近く浸かるほどに。
ただその間やってきたのは、40代くらいの男性が二人と10歳くらいの子供だけで、山小屋までの帰り道に30歳くらいのカップル一組と、子連れの30代前半くらいの若奥様二組とすれ違うというギリギリの運の無さは何なのだろうか首を傾げながら、生ビールをあおった。
もちろん、最高の湯上りでのビールは最高だった。


遭遇:美人登山家x1 ギリで混浴できなかった女性x3

呑み:硫黄岳小屋 - 本沢温泉 - 松原湖バス停 - とあるお寺さんの境内

コメント

このブログの人気の投稿

南北ドントリッジ下見

日程:2014/10/08(日帰り) ルート:長峰霊園 - 摩耶東谷 - 山寺尾根 - 掬星台 - 桜谷道 - 徳川道 - 北ドントリッジ - 分水嶺越林道 - 布引道 - 新神戸駅 コースタイム:04h 04min(休憩時間を含む) 距離:13.179km 累積標高:1,054m 天候:晴れ 気温:? 湿度:? 目的:例会山行下見 単独行 例会山行のリーダに指名されたからにはヤラざるを得ない。もちろんやること自体は、ヤブサカデハナイ。 「山羊戸渡」を要望されていたのだが、なんかみんなに過大評価している感、満載なルートなだけに気持ちがどうにもこうにも盛上らない。 って云うか、かつてそんな多大なる期待を受けて連れて行ったのに、その数多過ぎる所期を満たすことなんてとても出来やしなくて、ガッカリルートに認定されたことからも気持ちが萎えてしまう。 結局、余り足を踏み入れないコースを案内しますよ、なんて言葉を濁す。とどのつまり「山羊戸渡」までのアプローチの長さ故にダレタ気持ちを、その先から続くひたすらシンドイだけのアルバイトに過ぎない行程を満足させられるだけの力量を持ち合わせていないってコトだけのことだ。 で、選んだのは、摩耶東谷から南北ドントリッジへと続くルート。 ボクは通常、摩耶東谷を辿る時は、日本三大廃墟として名高い「マヤカン」へと詰めるのだが、一応、立入禁止となっている個人所有の敷地へと不法侵入すべく皆を連れて行くわけにも行かず、かと云って摩耶東谷を通しても、最終的にシンドイだけの藪漕ぎになるので、少しはマシだろうと山寺尾根へ抜けるルートを選択した。 通常、ボクひとりで上るのなら、摩耶東谷を谷通しで行くのだが、同行者が居るとなるとそうも行かない。摩耶東谷より入渓し、堰堤を捲いたところで山寺尾根との分岐へと戻った。そこで堰堤工事を知る。この路へは立入禁止だと知った。 山寺尾根をそのまま辿り、途中の広場から摩耶東谷へ下りる路を調べた。だがそこも、人を連れて行くにはどうかなって、路だった。 だからボクは、谷通しで良いかなって思った。 谷を歩く内は涼しくて良かった。だが、一度沢を外れ尾根を伝うと、その急勾配ゆえに、晩秋とは云え、まだまだ激しく照りつける日差しゆえに、段々と消耗していった。 今日はとても暑い日で、リュックの重

紀ノ川水系下多古川 本谷遡行 一日目 2020年6月6日

六月も初めだというのに全国各地で真夏日をたたき出す猛暑が続くなか、これはもう沢だな、と沢装備を整え出社する。 沢足袋のフェルトを張替えていなかったなと、石井スポーツで草鞋を買って大峰を目指した。 「関西起点 沢登りルート100」が見当たらないのでネットで適当に遡行図を探すが途中までのものしか見つからない。 初心者向けの容易な沢で登山道も沢筋に付いているみたいなことが書かれているから、オンサイトで大丈夫だろうとろくに情報も集めずに旅だった。 これがまたえらい苦労する羽目になろうなどとは何も知らずに。 沢沿いに今なお残る集落を抜け川をまたぐと一軒の建物が目についた。 確か川を渡ってすぐぐらいのところが取付きだったよな、うろ覚えの遡行図を思いだし、簡易浄水場の横から続く踏み跡をなぞって入渓した。 朽ち果てた取水口を越えるとすぐ、滝に出会った。 沢足袋に履き替え、草鞋を結ぶ。妙に鼻緒が短くて履きにくい。 念のためi-padで遡行図を確認する。6mの斜瀑(F1)とある。確かに6mくらいの高さだが、斜瀑というかふつうに滝だ。 直登できなくはないが、シャワークライムを強いられる。 思ったよりも気温が低いし日差しもない。入渓したばかりで体も温まっていないのに滝に打たれるのはいややなと、右岸の草付きを捲く。これが見た目以上に悪い。岩の上にうっすらと土がのり、頼りなげに草が生えている程度だった。 手掛かりになる樹根はおろか、幼木ですらほとんど手の届く範囲にはない。 それでも登れそうなポイントを探し、左へ左へとトラバースしていく。しかし、楽に登れそうなところは見つからず、心が折れた。 しかたがない。直登しようと緩んだ草鞋を結びなおした。 途端に鼻緒が切れた。ブチッとした手触りと共に、ボクの張りつめた気持ちも切れた瞬間だった。 取水口より手前まで戻り、今度は左岸を高捲く。獣道やもしれぬかすかな踏み跡をみつけ、たどる。 F1を越えて再び沢へ下りたいのだが、どれだけ探しても下りられそうなルートがない。捨て縄でも張れば別だが、戻ってこないので回収もできない。 下りられないのなら上を目指すしかない。どこかに登山道がついているかもしれないし、いっそ

武庫川水系西ノ谷遡行

武庫川水系西ノ谷遡行 武庫川水系太多田川赤子谷左俣 日程:2014/07/02-03(一泊二日) ルート:親水広場1613 - 入渓1628 - 霞滝1635 - 桜滝1648 - 満月滝1716 - 尾根1741 - 大峰山1834 コースタイム:2h 21min(休憩時間を含む) 距離:? 累積標高:? 天候:晴れ 気温:? 湿度:? 目的:沢登り 単独行 表六甲の沢の汚さに嫌気が差し、武庫川渓谷なら少しはマシだろうと西の谷を目指した。ついでに裏六甲の沢を幾つか絡めるつもりだ。 家の用事を何かしら片付けていると、なんだかんだでいい時間になってしまっていた。 宝塚でJR(宝塚-武田尾¥200)に乗換え、武田尾の駅より廃線跡を辿る。 放置され風化するに任されたトンネルを二つ抜け、親水広場から櫻の園へと入る。その入口を流れる沢が西の谷だ。 先ずは「もみじの道」を辿り、すぐに出会す堰堤を越えてから入渓する。そこですぐさま身支度を整える。沢足袋に履き替え、ラッシュガードを着る。電子機器はジップロックなり、サラスパの袋なり、LOKSAKなりで包み、ORのドライコンプサミットサックなり、EXPEDなりに突っ込んで完全防水にした。 最初の釜に入り腰まで浸かった。身体に籠った熱が嘘みたいに引いていく。暑さに負けてビールや酎ハイ片手に歩いた街中の暑さが、幻だったかの様に思えてくる。 幾つかの小滝を越え、10m程度の滝(霞滝)に出会った。越えられそうな気もするが、メットをも忘れてしまった単独行なので自重する。そして、定石っぽい右岸のルンゼから上った。そこに掛けられた残置ロープを頼るまでもないが、あったらあったでそれは楽だった。 再び緩い斜瀑を幾つか越えていく。そして幾段かの滝で構成された大滝と出会った。下から見上げても、どこが滝口か定かではない。それほどの連なりだった。 しかしその一段目に取付くには茶色く泡立った釜に浸かるか、無理矢理ヘツッて滝に寄るかしかなかった。もちろんその濁りに浸かりたくも無かったし、スタンスやホールドは随所に見られはするが、万が一落ちてしまった時のことを考えるとヘツるのも二の足を踏む。 結局、またまた右岸より草付きを登り、一段目を越えた辺りでトラバースし、上へと続く残置ロープを跨いで、滝へと戻った。