八ヶ岳 権現岳 雲上の湯 ルート:天の河原 - 前三ツ頭 - 三ツ頭 - 権現岳 - キレット小屋 - 赤岳 - 三叉峰 - 硫黄岳小屋 - 硫黄岳 - 本沢温泉 コースタイム:10h 05min(休憩時間を含む) 前三ツ頭 2,364m 三ツ頭 2,580m 権現岳 2,715m 赤岳 2,899 m 硫黄岳 2,760m 日程20130815-16(二日目) 距離:?km 累積標高:?m 天候:晴れのち曇りところにより雷雨 気温:? 湿度:? 目的:日本最高処野天風呂 単独行 天の河原 04:30 「キュ―――――――ン、キュ―――――――ン」 遠くで、そして間近からも鹿の鳴声が響き渡る。時刻は二時半を回ったばかり。起き出すにはまだ早過ぎるが再び眠りに就くにはうるさ過ぎた。鹿の糞にまみれて寝た屋久島の夜も、比良で迎えた星降る夜も、ここまでうるさいことは無かった。 テントから顔を出し辺りをうかがう。あれほど近くから聞こえた声はピタリと途絶え、遥か遠くから微かに響くだけでそれもやがて止んだ。再び静寂に包まれ夜空を見上げる。黄昏時からの薄曇りは未だ変わらず漆黒の空をぼんやりとさせていた。 もうひと眠りひと眠りとシルナイロンのボトム故に下へ下へとずり落ちるペラッペラの銀マットを敷き直しモンベルの#7へ潜り込んだ。 次に目覚めたのは3時半を少しばかり過ぎた頃だった。 空は未だボンヤリとも明るくなく、夜が白むには幾ばくかの時間が必要だった。 ここではストーブの青白い炎だけが地上を照らす明かりだった。ストーブのジェット音だけが周囲のざわめきだった。 小淵沢で買った乾燥野沢菜をタップリとブチ込んだ豚骨ラーメンをすすり込む。 たっぷり500g。一回の使用量は数gに過ぎない。買う時は気にならなかったその野沢菜の重量が、その嵩高さが、山を登り始めた今となって妙に邪魔になっていた。 普段は薄明が始まるまで行動を開始することなどない。 それを今回に限ってし始めたのは、駐車場で朝を迎えた登山者に見咎められたくなかった事と、標高1500m程に於いても耐えられぬ程の日中のクソ暑さを少しでも避けたかったからだった。 それでも朝の弱いボクの準備は至ってノンビリとしたもので、バックパックを担ぎ八ヶ岳への一歩を踏み出す頃に