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大峯山奥駈道順峯(一日目)

大峯山奥駈道順峯(一日目)
大峯山奥駈道順峯(二日目前編)
大峯山奥駈道順峯(二日目後編)

ルート:熊野本宮大社 - 大峯山奥駈道取付 - 七越の峯 - 大黒天神岳 - 金剛多和 - 五大尊岳南峰 - 五大尊岳 - 大水ノ森 - 大森山 - 玉置神社 - 花折塚 - 貝吹之野 - 香精山 - 地蔵岳 - 槍ヶ岳 - 葛川辻

日程:2012/05/03-05
コースタイム:10h 03min(休憩時間を含む)

大黒天神岳(573.9m)
五大尊岳南峰(825m)
大森山(1,078m)
玉置山(1,076.8m)
香精山(1,121.9m)
地蔵岳(1,250m)
距離:32.891km
累積標高:3,218m
天候:晴
気温:?
湿度:?
目的:大峯山奥駈道縦走
単独行

消費カロリー:5363kcal
HR:136ave
HR:167max

3日まで雨が残るとの予報を受けて計画変更を余儀なくされたのは、2日の朝のことだった。
まず考えたのは、吉野のツレんとこに泊って雨をやり過ごしてから上る、だった。しかし、翌日仕事が早いからってことで却下。それならと和歌山の天気を調べると、今晩には上がるということで、それなら、と紀伊田辺に前泊し、6:35発の龍神バスで熊野本宮から吉野へ向かう「順峯」に変更した。

予報通りに青く晴れ渡った空。少し曇っていてくれた方が涼しく上りやすいのに、なんて思うが贅沢は言ってられない。
本宮を参拝し朱印を頂く。少しでも重量を減らしたいのに、朱印帳なんて全く縦走に必要ない装備が含まれているが、奥駈の朱印を集めるのが今回最大の目的だったりするからこれだけは外せなかったのだ。

バスで来た道を、奥駈の取付きに至る橋へと戻る。標識をなぞり、護岸の上を大斎原方面へ向けて歩いていく。間もなく熊野川の東岸をへつる古道へ出会った。倒木を潜ったり跨いだりしながら辿るそれは、流石は修験の路、簡単には進ませては貰われへんな、ってなことなど思う間もなく舗装路と並ぶハイキングコースへと姿を変え、物足りなさを憶えたのだった。

それでも奉納された木札や、展望台の荘厳な大斎原の眺めが奥駈な気分を盛り立ててくれていたのだった。

玉置神社で御神酒を頂き、プラティパスへ水を補給した。まだ500mlも減っていなかったが、この先どこで補充できるかわからないのでマメに汲むにこしたことはない。もちろん酒も有るなら呑むにこしたことはない。
茶を飲みつつノンビリと境内を廻るが、奥駈へと戻る道が分からずに駐車場へと出てしまっていた。
その一角にある茶屋の生ビールに誘われ暖簾を潜る。あいにく生ビールは切らしているとのことなので缶ビールを開ける。やっぱりビールも有るなら呑むにこしたことはないからだ。つまみにはさんま寿司を選ぶ。本当はさんま寿司はあまり好きではないのだが、めはり寿司ではアテって感じではないし、汗だくでは熱々の「おでん」に食指が動かないのは当然だった。そんな消去法で選んだ一品ではあったが、鹹さ控えめで脂も残っており美味しくいただくことが出来たのだった。
奥駆への路は神社の奥から続いているのだそうだ。その手前までなら二度行っている。そこにまた足を運ばなければならないのかと考えるとうんざりする。やっぱり戻らないとダメなんか、と呟くと、駐車場から続く車道を進んでも奥駆へ出ると言う。それよりもすぐそこの階段を上れば玉置山山頂だと云うではないか。それならもちろんその階段を行くにきまっている。車道を歩くのはおもろないし、引返すのなんて以ての外だった。

ビールを飲み干す頃には汗も冷え寒さを覚えた。熱いお茶をいただきながら、玉置神社のこと、名産品のこと、冬季のこと、十津川のことなんかを聞く。修験の山と云うことで禁欲的に行こうと意気込んでいたのに、ここまでの道程のあまりのぬるさに気持ちが緩み、小一時間ほど寛いでしまっていた。

もちろんこのことが後々重くのしかかってくることとなるのだった。
すれ違ったおんなのこ達に焚火の移り香を嗅いだ。
それはボクが泊まるやもしれぬ山小屋のものかもしれないし、その先に建ち並ぶ避難小屋のものかもしれなかった。
そしてその薫香は、車道に戻っては奥駆に入り奥駆を辿っては車道に出会す温さとの終わりを告げるには十分過ぎる濃密さを留めていたのだった。

山と高原地図にキャンプ適地と載っている塔ノ谷峠には先客がいた。路と路が交わるわずかな平場には、ちょっと場違いなくらいに大きめなテントが設営されており、ストーブがゴウゴウと音を上げていた。
辺りは薄暗くはあったが、それは単に山深くなったからであって日没までにはしばらく時間も有り、ここで腰を落ち着けるには早すぎる按配だった。それでもその先に続く急坂にこれまでの疲れが一気に噴き出し、幕営に良さそうな平場はないかと探しながら惰性で歩くようになっていた。
危険と書かれた槍の穂先を迂回しようと思ったのは、暮れゆくなかでの鎖場を恐れたからではなく前日の大雨にぬかるんだ急坂で転び、泥にまみれ、腕と膝に血をにじませ、履き古したスポルティバのアッパーをついに破ってしまい、ガンガンいこうぜ、って心持ではなくなっていたからだった。
山頂直下から続く沢沿いの途に逸れた。そのまま下れば上葛川に至り、沢をへつる分岐を辿れば、難所を避けるだけ避けてそれほど遠回りにならずにキャンプ適地である葛川辻に出るよう地図には描かれていた。しかし沢に沿う途にそれらしい分れはなく、いつまでも下っていた。地図に依れば沢を渡床する感じではなくその始りを横切るはず、なのだが、山と高原地図だから地形など全く当てにならない。このまま道なりに下りたとしたら、たとえ正しい途に出会ったとしてもそこそこのアルバイトはせざるを得ないだろう。となると、下りて上るよりは上って下りる方がいいなぁ、いいよなぁってのが、真っ当なハイカーの気持ちってもんで、それでも、もしかしたら踏み跡が薄くなっているだけで見逃したのかも、なんて色気を出して藪の隙間から分け入ってみるが、やっぱりそこは藪だらけで藪漕ぎをしながら奥駆へと戻る羽目になるという、やっぱりいつも通りのボクの登山スタイルとなっていくのだった。
すっかりやる気をなくして辿りついた鎖場だったが、思ったよりも早く到着し、空はまだ明るく、思いの外容易に乗り越えることが出来た。そこは疲労感だけがつのり、すっかり気弱になっていたボクでも空身にならずとも越えられるほどに楽なものであった。そしてその難所だとばかり思い込み、憂鬱になっていた元凶たる箇所を越えた安堵からか、真っ暗な中ココを行かなければならないレオちゃんのことを心配するくらいの余裕が生まれたのだった。
付け替えられてからあまり月日がたっていないであろう錆び一つ浮いていない鎖は、ヘッデンの光を受け、違うことなきルートを示すのだろうか?それともカト―さんが語られたようにヘッデンの創りだす陰影がルートを惑わすのだろうか?それは定かではないが、月明かりに照らされて尚、朧なこの峯を、日没後に通過することは出来れば避けたいと、巻道に掲げられた通行禁止の看板を見やり思った。
槍ヶ岳を越えて間もなく、次のキャンプ適地と書かれた葛川辻があるはずだった。水場マークもあるので、そこを本日のキャンプ地にしようと思っていた。
そろそろ葛川辻が見えてきても良いのではないか?と思い始めた頃、右へと曲がるしっかりとした踏み跡があった。その先には送電の鉄塔が建っており、監視通路の分岐なのだろうか?とそちらへは敢えて向かわずに、尾根筋を真っ直ぐに突き進んだ。そしてその先へ続く踏み跡らしきものは千々に乱れ、その先を見失った。これは明らかに奥駆ではないよな、と送電塔側へと引き返す。その麓は、一見、幕営しやすそうなサイトに見えなくも無いが、落雷に平されただけであり、こんなトコロで泊まろうものなら命が幾つあっても足りない。もちろんここが葛川辻であろうはずもない。
その先に続く急坂に取り付き、しばらく上ってもそれらしき場所がなければ、先程の尾根筋まで戻って幕営しようと腹をくくった。

葛川辻は、杉の落葉を敷き詰めたぽっかりとした平場だった。そこは塔ノ谷峠よりもひとまわりもふたまわりも広く、一人用なら4張は設営出来るだけの広さがあった。先客はいない。程よい立木と持参した一脚を使いツェルトを張った。
水場を示す看板の先にトラロープが続く。が、水は朝晩の調理をしても十分に余るくらいあるので、明日の出発前に汲みに行くことにした。
晩飯は90秒で茹であがるマカロニを粉末のたらこソースで和えたもの。それだけでは物足りなかったので、棒ラーメンも茹でた。具は乾燥ラーメンの具。こんな物でもあれば少しはラーメンらしい姿になるものだ。
すっかり日も暮れた。時折聞こえる虫の音と梢を抜ける風の音以外何もない静寂のなか、座りの悪い100均シリコンカップにパウチ入りの日本酒を注ぐ。アテはよっちゃんイカ。それを4袋空けた。子供の時に比べ量が少なくなったように思えるのはボクが大きくなったからだろうか?いや、卑しくなったからだろうな、なんて思っていると木々の合間にチラチラと灯りが揺れるのが見えた。
レオちゃんか?それにしては随分とゆっくりとしている。ゆっくりと近づいてくるその人影に灯りを向けると、似ても似つかぬ全くの別人であった。

「テント張れる場所ありますか?」「一人用なら十分張れますよ」「ちゃんとしたテン場やないんですね」「水場があるって聞いたんやけど?」「ありますよ」「それじゃあ荷物持ってきます」ってな感じで再び現れた彼の背には、雪山での縦走も斯くやってほどの巨大なバックパックがあった。
そして春時の低山縦走には過ぎたバックパックから、単独行には不釣り合いなテントを取りだす。

「買ったばかりだから、慣れてなくて」
大きすぎるテントに照れたのか、手際の悪さを恥じいるのか、そんな言葉を口にしながら張り綱を伸ばしていく。

「5日に同窓会があるからそれまでに下りないといけないから少しでも距離を稼いでいたかったんですよ」
「水をボッカすると生ビールが呑める山小屋が人気でしたよ」
「六甲山縦走を一人でやってみたら6時間半でした」
「つぎはキャノンボールに出てみようかな」
「ボクは単身赴任で江坂にきてまして」
「富士登山競争は3回完走しています」
「フルマラソンで3時間40分切れないと足切りでしょうね」

なんて話をしているうちに般若湯は、残り100mlを切っていた。話し込むとついつい呑みすぎるのはボクの悪い癖。奥駈2泊3日の旅の予定だったから一日450mlずつって思っていたのに、初日に800mlも呑んでしまっていた。

「そろそろ食事を作ります」という彼に「おやすみなさい」を返し、ツェルトに潜りこむ。

200ルーメンのヘッデンは、照度を落としても目が疲れるだけで本を読むのには明るすぎスイッチを切った。

早朝よりの疲れと、程良い酔い心地と、一時の眼の疲れからか程なくまどろみ始めて居たのだった。

「チワッす、チワッす、チワッす」
聞きなれた挨拶とともにツェルトの入口がはだけられ、ヘッデンの灯りの下にレオちゃんの笑顔があった。

「レオちゃんが?なんで?」
虚ろなボクのつぶやきに
「そこで、出会ったひとから、みっちゃんが、ここにいるって、聞いて、引返してきた」
息を弾ませ答えるその端から汗が滴り落ちていく。

「そういえば彼は夜明け前に出発するって言っていたな」
徐々にはっきりしてきた頭でその状況を思い描いていた。

「一体、今、何時なんだろう?」
ヘッデンを灯し、時計を見た。午前0時を30分ほど廻った時間だった。
「夜明けまではまだ遠いな」
はっきりと目が覚めていった。鼓動が激しく胸を叩く。外にはわずかな月明かりもなく、ヘッデンの明かりに照らし出された巨大なテントが印象的に浮び上る。全部夢だった。

「どれだけレオちゃんに逢いたかったんだよ」
灯りを消し、再び包まれた暗闇の中ひとりごちた。

コメント

  1. こんにちは
    ブログコメント今気づきました。
    あの状況の中どうだったのかなと思ってましたが無事で良かったです!
    2日目のも楽しみにしています。
    それとfacebookはされてないのですか?

    返信削除
    返信
    1. UTMFお疲れ様でした。

      奥駆は、実はまだまだ一日目も終わっていないのですorz

      先日は、タケイプロのガイドで高御位を走り廻っておりました。
      当日カトーさんと御一緒できると思っていたのですが、チャリで向かわれているとかでお会いできなくて残念でした。

      Facebookでは既にカトーさんの友達に忍び込んでおりますよ、ふふふ。

      削除

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