OLYMPUS OM-D E-M1 Panasonic Lumix G 14mm F2.5 ASPH
川湯温泉駅に到着した時点で日没をむかえるの分かり、一度はあきらめた硫黄山。それでもやはり上るように決め直したのは釧路へ向う前日のことだった。
それは、いよいよ明日は釧路へ向うと云うその日に、ファイントラックのシュラフを衝動買いしてしまったからだった。
20年以上愛用してきたダウンシュラフはかつての暖かさをすっかり失い、秋の山々でも度々目を覚ますほどの役たたずになりはてていた。
多くの思い出や汗や臭いが染みついたそんなシュラフ。
あるときは雪の沢で濡らしてしまい、両手の指10本まるっと凍傷を負ったり、またあるときは雪山でまた濡らしてしまい、エマージェンシーシートにくるまり寝られぬ一夜をすごしたり、晩秋の谷川で雨に打たれ、濡れたシュラフで身体が冷える度に温泉に入りに行ったり、そんな思い出がいっぱい詰まったシュラフだから、次に買う時は濡らしても大丈夫なポリゴンネストと決めていたのだから、衝動買いとはいえ、いつかは買わなければならないものではあったのだ。
それを買ってしまったからには使いたくなるのが人情ってヤツだ。
ちょうど夜は気温が氷点下4℃くらいになる硫黄山周辺は、ポリゴンネストオレンジのT limit(-2℃)にピッタリだったのだから、試してみたくなるのは当然の心境だっだ。
「ヒグマ出没注意」におびえながらも、もう冬眠しているだろう、と、自分を励ましながらヘッデンの明かりを頼りにすすむ。
ハイマツ帯はやがて隈笹にかわり、路をさえぎる倒木が増えてきた。
散策路は踏み跡がくぼみ、両わきが土手のように盛り上がっているから、月が未だ出ていない闇夜であっても迷いようがない。あとは山頂を目指す分岐を見落とさないだけだ。
土手を踏みわける跡を見つけた。反対側も踏み荒らされている。
ここだろうか。事前に調べたルートはまだ先のはずだ。だけれども、崖も岩場も沢もない溶岩ドーム状の低山。どこから登ろううが上へすすむ限り山頂に着くはずだ、と、その先に続く踏み跡をたどった。
引き返そうと思ったのは傾斜が急になり、踏み跡を見失なったときだった。
簡単なハイキングコースだと思っていたから、機内持ち込みサイズに納めようと思っていたから、食糧や酒やマットがわりのエアキャップやアルミ蒸着シートなどの釧路で買い求めた品々をスーパーのビニール袋に詰めたまま持ち歩いていた。
それが藪こぎの際に裂け、持ち手の片方はちぎれていた。
だから、もう少しラクそうな、藪こぎをしなくてもよさそうな、つまりあらかじめ調べていたルートをたどろうと、もときた散策路へと引き返しはじめる。
上りではあれほどしっかりとついていた跡が下りではまったく見分けがつかなかった。たぶんこっちから来ただろうと進むも、いくら歩こうとも散策路は見つからない。
奥駆道の悪夢が蘇る。
リングワンダリングと云う言葉を思い出す。
もはや山頂の方角すら見失なっていた。
GPSはおろかシルバすら持ってきていないうかつな自分を悔む。万が一遭難したとしても携帯すらないのだから助けも求められない。
幸い、ツェルトにシュラフ、3食分の食糧に酒も500mlある。月が出れば山の位置くらい掴めるだろう。今日の月の出は21時過ぎ。月齢20.5夜。十分な明るさだ。月待にビバークして体力を温存すべきか悩む。さほど広い山域ではないのだから、まっすぐ進めさえすればどこかには着くはず。先ほどの踏み跡がルートでないならヒグマがつけたものかもしれない。早くここから立去るべきだ。結局、そんな結論に落ち着いた。
まず山頂を目指す。ロストした時の基本。斜面に差し掛かったら直登。藪やナメんなよ、結局、そこだった。藪こぎは好きなのだ。
山頂と思う方へ歩き出した。極力まっすぐ進む。それだけに注意を払っていた。ほぼ平らな茂みをひたすらに進んだ。するとあっけなく散策路に出会ったのだ。
それじゃあ、この路をさらにたどってちゃんとしたルートから上りますか、と、気を取り直した。
隈笹をかき分けて進む。倒木を乗り越え、二本並んだ倒木に出会った。
それはさっき越えた倒木だった。迷い彷徨ううちにもときた方角へ引き返していたのだ。
もう心が折れた。二本の倒木を乗り越える元気などみじんも残ってやしなかった。
ピークハントに来たのではない。シュラフの耐寒テストに来たのだ。
寝るだけならマクワンチサップに上る必要もない。つつじヶ原にベンチやテーブルがあった。そこでいいではないか。雲ひとつない夜空を見上げ、そう思った。
ツェルトは張らずにカバーだけ被せたシュラフに潜り込む。天気予報は明日も晴れだと告げていた。
凍りそうなほどキンキンに冷えた十勝ワインに北海道の地酒をかさねる。満天の星空に流星がひとつ走った。これだけの星空ならPENTAXを持ってくるべきだった。OLYMPUSやLeicaではロクにピントも合わせられない。それでも少しでもこの夜空をなにかに留め置きたくて、ピントもロクに合わせずに幾度かシャッターを切った。
シュラフは暖かく、新品のありがたさを実感する。
それでも夜半に目を覚ます。
天頂に差しかかった月明りが眩しかったのもあるが、なにより顔が痛かった。シュラフに守られない部位に容赦なく霜が降りそそいでいた。シュラフに潜って顔を両手でこする。痛みが少しやわらぐ。ウェットティッシュで拭くと真っ黒に汚れていた。この痛みは寒さだけではなく、火山灰も関係していたかもしれなかった。
OLYMPUS OM-D E-M1 Panasonic Lumix G 14mm F2.5 ASPH
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LEICA X1
LEICA X1
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OLYMPUS OM-D E-M1 Panasonic Lumix G 14mm F2.5 ASPH
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OLYMPUS OM-D E-M1 Panasonic Lumix G 14mm F2.5 ASPH
LEICA X1
日程:2018/11/28-29(一泊二日)
ルート:青葉トンネル遊歩道入口1555 - 硫黄山レストハウス1603 - アトサヌプリ1606 - つつじヶ原自然探勝路入口1627 - 原生つつじヶ原の径分岐1645 - 道迷い - 原生つつじヶ原の径分岐1741 - つつじヶ原自然探勝路 - ビバーク - 硫黄山レストハウス0522 - 青葉トンネル遊歩道入口0540
コースタイム: 13h.45min (宿泊、休憩時間を含む)
アトサヌプリ(硫黄山):512m
マクワンチサップ:574.1m
地形図:川湯
距離:?km
累積標高:?m
天候:晴れ
気温:?℃
湿度:?%
目的:耐寒テスト
単独行
川湯温泉駅に到着した時点で日没をむかえるの分かり、一度はあきらめた硫黄山。それでもやはり上るように決め直したのは釧路へ向う前日のことだった。
それは、いよいよ明日は釧路へ向うと云うその日に、ファイントラックのシュラフを衝動買いしてしまったからだった。
20年以上愛用してきたダウンシュラフはかつての暖かさをすっかり失い、秋の山々でも度々目を覚ますほどの役たたずになりはてていた。
多くの思い出や汗や臭いが染みついたそんなシュラフ。
あるときは雪の沢で濡らしてしまい、両手の指10本まるっと凍傷を負ったり、またあるときは雪山でまた濡らしてしまい、エマージェンシーシートにくるまり寝られぬ一夜をすごしたり、晩秋の谷川で雨に打たれ、濡れたシュラフで身体が冷える度に温泉に入りに行ったり、そんな思い出がいっぱい詰まったシュラフだから、次に買う時は濡らしても大丈夫なポリゴンネストと決めていたのだから、衝動買いとはいえ、いつかは買わなければならないものではあったのだ。
それを買ってしまったからには使いたくなるのが人情ってヤツだ。
ちょうど夜は気温が氷点下4℃くらいになる硫黄山周辺は、ポリゴンネストオレンジのT limit(-2℃)にピッタリだったのだから、試してみたくなるのは当然の心境だっだ。
「ヒグマ出没注意」におびえながらも、もう冬眠しているだろう、と、自分を励ましながらヘッデンの明かりを頼りにすすむ。
ハイマツ帯はやがて隈笹にかわり、路をさえぎる倒木が増えてきた。
散策路は踏み跡がくぼみ、両わきが土手のように盛り上がっているから、月が未だ出ていない闇夜であっても迷いようがない。あとは山頂を目指す分岐を見落とさないだけだ。
土手を踏みわける跡を見つけた。反対側も踏み荒らされている。
ここだろうか。事前に調べたルートはまだ先のはずだ。だけれども、崖も岩場も沢もない溶岩ドーム状の低山。どこから登ろううが上へすすむ限り山頂に着くはずだ、と、その先に続く踏み跡をたどった。
引き返そうと思ったのは傾斜が急になり、踏み跡を見失なったときだった。
簡単なハイキングコースだと思っていたから、機内持ち込みサイズに納めようと思っていたから、食糧や酒やマットがわりのエアキャップやアルミ蒸着シートなどの釧路で買い求めた品々をスーパーのビニール袋に詰めたまま持ち歩いていた。
それが藪こぎの際に裂け、持ち手の片方はちぎれていた。
だから、もう少しラクそうな、藪こぎをしなくてもよさそうな、つまりあらかじめ調べていたルートをたどろうと、もときた散策路へと引き返しはじめる。
上りではあれほどしっかりとついていた跡が下りではまったく見分けがつかなかった。たぶんこっちから来ただろうと進むも、いくら歩こうとも散策路は見つからない。
奥駆道の悪夢が蘇る。
リングワンダリングと云う言葉を思い出す。
もはや山頂の方角すら見失なっていた。
GPSはおろかシルバすら持ってきていないうかつな自分を悔む。万が一遭難したとしても携帯すらないのだから助けも求められない。
幸い、ツェルトにシュラフ、3食分の食糧に酒も500mlある。月が出れば山の位置くらい掴めるだろう。今日の月の出は21時過ぎ。月齢20.5夜。十分な明るさだ。月待にビバークして体力を温存すべきか悩む。さほど広い山域ではないのだから、まっすぐ進めさえすればどこかには着くはず。先ほどの踏み跡がルートでないならヒグマがつけたものかもしれない。早くここから立去るべきだ。結局、そんな結論に落ち着いた。
まず山頂を目指す。ロストした時の基本。斜面に差し掛かったら直登。藪やナメんなよ、結局、そこだった。藪こぎは好きなのだ。
山頂と思う方へ歩き出した。極力まっすぐ進む。それだけに注意を払っていた。ほぼ平らな茂みをひたすらに進んだ。するとあっけなく散策路に出会ったのだ。
それじゃあ、この路をさらにたどってちゃんとしたルートから上りますか、と、気を取り直した。
隈笹をかき分けて進む。倒木を乗り越え、二本並んだ倒木に出会った。
それはさっき越えた倒木だった。迷い彷徨ううちにもときた方角へ引き返していたのだ。
もう心が折れた。二本の倒木を乗り越える元気などみじんも残ってやしなかった。
ピークハントに来たのではない。シュラフの耐寒テストに来たのだ。
寝るだけならマクワンチサップに上る必要もない。つつじヶ原にベンチやテーブルがあった。そこでいいではないか。雲ひとつない夜空を見上げ、そう思った。
ツェルトは張らずにカバーだけ被せたシュラフに潜り込む。天気予報は明日も晴れだと告げていた。
凍りそうなほどキンキンに冷えた十勝ワインに北海道の地酒をかさねる。満天の星空に流星がひとつ走った。これだけの星空ならPENTAXを持ってくるべきだった。OLYMPUSやLeicaではロクにピントも合わせられない。それでも少しでもこの夜空をなにかに留め置きたくて、ピントもロクに合わせずに幾度かシャッターを切った。
シュラフは暖かく、新品のありがたさを実感する。
それでも夜半に目を覚ます。
天頂に差しかかった月明りが眩しかったのもあるが、なにより顔が痛かった。シュラフに守られない部位に容赦なく霜が降りそそいでいた。シュラフに潜って顔を両手でこする。痛みが少しやわらぐ。ウェットティッシュで拭くと真っ黒に汚れていた。この痛みは寒さだけではなく、火山灰も関係していたかもしれなかった。
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LEICA X1
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LEICA X1
日程:2018/11/28-29(一泊二日)
ルート:青葉トンネル遊歩道入口1555 - 硫黄山レストハウス1603 - アトサヌプリ1606 - つつじヶ原自然探勝路入口1627 - 原生つつじヶ原の径分岐1645 - 道迷い - 原生つつじヶ原の径分岐1741 - つつじヶ原自然探勝路 - ビバーク - 硫黄山レストハウス0522 - 青葉トンネル遊歩道入口0540
コースタイム: 13h.45min (宿泊、休憩時間を含む)
アトサヌプリ(硫黄山):512m
マクワンチサップ:574.1m
地形図:川湯
距離:?km
累積標高:?m
天候:晴れ
気温:?℃
湿度:?%
目的:耐寒テスト
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