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第7回 六甲縦走キャノンボールラン

日程:2012/10/27-2012/10/28(日帰り)
ルート:宝塚ローソン - 塩尾寺 - 東縦走路 - 一軒茶屋 - 六甲ガーデンテラス - 掬星台 - 天狗道 - 鍋蓋山 - 菊水山 - 横尾 - 馬ノ背 - 須磨浦公園前(DNF)

コースタイム:往路:9h 23min 34sec(休憩時間を含む)
:復路:(DNF)
距離:往路:42.794km
:復路:(DNF)km
累積標高:往路:2936m
:復路:(DNF)m
天候:雨
気温:?
湿度:?
目的:キャノンボールラン本番
同行者:239人くらい

前日、3時までモンクで呑み、昼過ぎまで寝て、睡眠のリズムをキャノンボール用にセッティングしようと思っていたのに、10時前に目が覚めた。

寝なおそうにもどうもこうにも寝られない。それどころか風邪気味だ。そんなときはサウナにでも入って、っと富士温泉へ向かった。

18:30
高田屋集合。

装備万全、と臨んだはずなのに傘を忘れた。確実に雨は降るし、傘を差さない妖精なんてキャベツにも劣る。間に合せにダイエーで折畳傘を購入し、暖簾を潜った。

既に、シンちゃん、エーちゃん、ジョンヒが三人テーブルで始めていた。折畳椅子を追加しそこに加わる。来るまでにビール350mlを空けていたが、さらにビールを追加する。アテは鯵南蛮漬。妙に寒いが、熱燗は止めておく。呑んだら寝てしまいそうな気がするからだ。

ニーさんが来た。三人掛けは、詰め詰めで五人掛けと化した。大瓶と出汁巻をさらに追加する。震えが来る。武者震いではない。熱が上がったようだ。くしゃみが止まらない。キャバクラさんが遅ればせながら現れる。テーブルは定員オーバー。カウンターで話に加わる。七時半を過ぎた。鼻水が垂れる。かゆ うま

20:30
湯本台広場到着。

水道筋で葛根湯ドリンクを買い、二本まるっと一気飲みするが症状は改善されない。開催準備を手伝うが、鼻水がやばすぎる。下を向くと垂れ落ちていく。クラシアンを呼ばなければならないレベル。

知った顔、知らへん顔が続々と集まりだし、開催時間には60人ほどの大所帯となっていた。行動食を受け取り、ローソン横に集まりスタート。カッ飛んでいくやつ、マイペースで上るやつ。各々の思惑でレースは始った。

22:26
甲子園大学通過。

「こっちで良いんですかね?」って後ろを指さされる。撮影を続けながら人の流れに乗っていると、甲子園大学への曲がり角を越えていた。

「あーこっちでも行けるけど、上りではあまり使わへんな」この先に続くのは、九十九折りの車道を直登するトレイルである。脚の強いトップ集団にとっては時間の短縮となるだろうけれども、安易につき従った者たちには過酷な選択となるかもしれない。振り返れば、車道ルートに向かう人は皆無である。途を知らない人も多いから前を行く人に付いていくのは当然と云えば当然なことだ。そこにボクが引返しては余計な混乱も生まれるだろうから、そのままトレイルへと入って行く。

22:50
東縦走路通過。

まあまあの纏まりをみせた水道筋メンバーではあったが、そろそろ、体力、気力、体調、ペース配分、その他さまざまな理由により、バラケ始めていった。
まずはエーちゃんとキャバクラさんが、足の遅いボクらの集団を待つのに飽きて置いていく。そして脚を痛めているケンケンさんが遅れ始めていった。もろもろのしがらみをかかえたシンちゃんも置き去りにして、タクジ―やススムなどなどとパーティを組み、上りは歩いて、下りはひゃっほーと駆けおりる。

ひゃっほーは良いのだが、風邪からか、そぼそぼと降りしきる雨に冷やされたのか、腹の調子が妙に悪い。下っ腹に力が入らなくて踏み込めない。だんだんとタクジ―たちに置いていかれ始め、単独になれば雉撃ちも楽でかえって良かったかも?なんて思い始めた頃にガクに追いつかれた。
「ユッキーは後ろの集団に捕まっているで」って、遅い歩みにジレて飛び出して来たらしい。

下ネタなどを交わす内に、途に迷ったTKGたちと合流。そのまま、東縦走路を抜けるまで刹那的なパーティーを組んだ。

00:18
一軒茶屋休憩。

今回もちゃりらん屋さんがエイドを開いていた。コカコーラを一気に飲み干し、熱いスープを頂く。
一軒茶屋前の自販機で飲みもんを買うエーちゃんとキャバクラさんを見つけた。

東縦走路から降り出した雨は、いよいよ本格的に降り出す様相を露わにしてきたので、パタゴニアのフーディニを羽織る。もたもたするボクを置いて駆けていく三人。いつしか、今回もまた、ひとりとぼとぼ舗装路を歩く羽目になっていた。

「あっ、みっちゃんや」振り返るとユッキーがおった。
ボクの一人旅は五分で終わった。

00:25
東六甲DWを走る。

「なにしてるんすかー?」
一度通り過ぎた大阪ナンバーが速度落とし、ボクたちの横に並ぶ。息を整え「トレランの大会が」って言おうとすると後ろのやつが、
「ケニアッ!ケニアッ!ケニアッ!ケニアッ!」っと拳を振り上げ叫ぶ。エリコと一緒なら、おっ、知り合いか!?っと思うところだが、横に居るのはユッキー。何がケニアなん?って疑問符が浮かぶ。

そしてまた「なにしてるんすかー?」って問いが投げかけられる。「おい、キャノンボールランって知ってるか?」質問に質問で返そうとすると、すかさず「ケニアッ!ケニアッ!ケニアッ!ケニアッ!」と後ろのやつが繰り返す。

ちょっ、お前ら聞く気あんのかwwwwwwwってニヤケているうちに走り去っていった。
夜中の六甲山には、いろんな奴が出る。

00:34
引き続き東六甲DWを走る。
前を行く姿を一つ見つけた。
「ガクかな?」ってペースを上げる。「いや違う、トモッタ―か」とペースを落とすが、ユッキーはそのままガクを追いかけるべく走り去っていった。トモッタ―もユッキーを追いかけるべくペースを上げた。ボクは歩いた。

00:45
六甲ガーデンテラス到着。
そろそろ、う○こをしなければなって思いながらりょううん台へと進む。そこには、バカ騒ぎをする5,6人の集団や、夜景を眺めるカップルのシルエットが浮かぶ。こんなところではおちおちう○こもできやしない。六甲枝垂れを通り抜ける風の騒がしさを見上げながら、通り過ぎる。
一時のトレイル区間に入り、ヘッデンの暗さに驚愕する。車道を通っていては全く気付かなかったのだが、AA一本駆動のエナジャイザーの保ちは予想以上に悪かった。ぼんやりとしか見えない足元を確かめるように踏み歩いていると、背後から巨大な灯りが迫ってきた。
「ちわっす」って途を譲ると「みっちゃんさん、お疲れ様です、竹井です」いつも礼儀正しいプロだった。

01:00
記念碑台で○んこ。
カンツリーに入るとすぐにまた一人となってしまっていた。緩い登りに差し掛かると、プロの走りについて行けなくなったからだ。それでも、記念碑台で○んこをしやすくなったから、望むところだなんてうそぶいてみる。
記念碑台のトイレは灯りも点かなかったが、こっちはヘッデン付きだから問題ない。天井にへばりついた巨大なゲジゲジを睨みながらキバル。

01:15
サウスロード突入。
あれほど暗い暗いと嘆いていたのに、バッテリーを交換しないまま車道を外れてしまっていた。もはやロウソク一本分の光量もなかった。知らなければとても辿れない途の笹を漕ぐ。縦走路から外れたルートはまったく整備されておらず、車道を辿った方が遥かに早かったのでは?とも思ったが、つまずきながらそろそろと途を進んだ。
分岐よりこちらへ向かう灯りを見つける。早く追いついて足元を照らしてくれ、と思うのだがなかなか近づいて来てくれない。街灯が階段を照らし始めた頃になってようやく彼は追いついて来たのだった。
バッテリーを交換したからにはもう恐れるものはない。真っ暗やみのアゴニ―坂に足取りも軽く突入して行く。

01:49
掬星台到着。
もしかしたら誰か休憩でもしているのでは?の期待は軽く裏切られたが、豚汁のお接待を受けることに。
「十人ぐらいのグループが来てましたよ」の報に、みんなに会えるかもと天狗を駆けおりる。

02:39
市が原着。
トイレ前で休憩を取るみんなと合流。
キャバクラさん、エーちゃん、ジョンヒ、ショウヘイ、タカユキック、タクジーにトモッタ―もいるが、シンちゃんやガクたちの姿はない。
ここにいるみんなはボクも含めて天狗を下ってきた。これまでの雨でドロドロになっているであろう地蔵はイヤだったからだ。
だが、シンちゃんたちは地蔵を行くと言っていた。そしてまた地蔵を行ったのであろう。その少しの差が積み重なって、追いつけないほどの大きな開きとなってしまっていた。

03:04
大龍寺エイド。
市が原の自販機は、夜中には電源が落とされている。だから大龍寺の自販機は、キャノンボーラ―の道しるべとなるべき大切な灯りである。
そしてその安らぎの地に、往路ではもうないだろうと思っていたエイドを見つけた時は、本当に嬉しかったんだ。
コカコーラで喉を潤し、柿ピーを摘む。コーラは当然として、柿ピーの旨さも身にしみる。ハイドレに水を頂いていると、急に震えが来た。噴き出す汗と降りしきる雨で体に張り付いたシャツは容赦なく体温を奪う。五分間の休憩すら許してもらえない。休むな、少しでも進め、と常に急かされていた。

03:21
鍋蓋山登頂。
遅れがちだったトモッタ―の姿は既に見えなくなっていた。
「シンちゃんに付いていくからや」なんて毒も吐かれる誰よりも山に登っている漢、トモッタ―。だが山の女神、いや、摩耶の夫人には愛されてはいなかった。

04:02
菊水山登頂。
水分補給、行動食摂取に小休止。風が抜ける菊水山山頂には長く滞在することは出来ない。
ここでジョンヒから貰ったアメちゃんが、ボクを救うことになろうとはこの時には考えもしなかった。

04:56
ヤマザキショップでお買いもの。
もちろんこんな時間に開いてなどいないのだが、店前の自販機が妙に充実している。縦走にどうぞ、とばかりに行動食なども豊富だ。しかし、コカコーラはない。

05:36
高取さん登頂。
毎日登山発祥の地は「再度山」かもしれないが、現在のメッカは「高取山」である。
こんな時間でも参道には人があふれ、各々馴染みの茶屋が開くのを今か今かと待ちわびている。
「何時に(宝塚を)出たん?」「ちょっと前に通ったで」「頑張れよ」なんて声をかけながら通り過ぎる。
七度目にもなると知名度も上がり「なにしとるん?」的な質問はもうそこにはない。

06:24
馬ノ背通過。
ウツミさんとこのコとそのお友達を加え、馬ノ背をよじ登る。もう一息で馬ノ背を抜けるというところまで来て、全く足が動かなくなってしまっていた。完全にハンガーノックだった。
先へ先へと進んでいく皆を、バテて登れなくなったウツミさんの弟子たちと共に見送る。ボクもカロリーを摂らなければ一歩たりとも踏み出すことも出来なかった。バックパックにはカロリーメイトもトレイルミックスも入っていたのだが、固形物をかみ砕くだけの気力も失われるほど消耗していた。それだけ風邪が悪化していたのだ。
梅キャンディを舐める。そしてショッツを啜った。そうしてようやく歩みを進めることが出来るようになった。しかし、走り出すことは出来なかった。キャバクラさんたちに追いつくのは絶望的だった。

階段を下っているとより一層雨が激しくなってきた。雨具ではないフーディーニは、ついに雨を通すようになり、体に張り付きだした。ここでようやく傘を差したのだが、もはや妖精たる力を失っていた。そしてボクは、キャベツからきゃべ人になったのだった。

07:43
復路スタートまでに間に合えば、と思っていたのだが、前回と同様に道を間違え、たどり着いたときにはトップグループが階段を駆け上がっていく様を見送る羽目に。
それはつまり、史上最悪のコンディションで望んだキャノンボールの、なんとも冴えない終わり方だったんだ。




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