PENTAX K-1 smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited 頬を冷たいものが打った。 一粒の雨の雫がボクを打ちつけたのだ。 それはもう夜もとっぷりと更けたころ。 ちょうど頂点を2、3分越えた辺りを時計は示していたころのことだった。 すぐさま跳び起き、シュラフをバックパックに詰め込む。 四阿に移動するためだ。雨を避けるためだ。 虫を避けるために寝床としてえらんだ展望台を捨てて、雨を避けるための次に寝床として選んだのは四阿だったからだ。 だから虫に対してまでは無防備だった。雨に対しての防御しか考えていなかったからだ。 明日は昼頃まで大丈夫そうだなと予想していたから、昼過ぎから雨が降りそうだなと考えていたから、雨を心配せずに、虫だけを心配していたから展望台で寝ていたのだからだ。 雨に打ちつけられても大丈夫なからだを持ってはいるが、防滴ではないレンズを濡らすのがいやだから、四阿に移るのだ。 もしかした雨が降るかもしれないから、雨が降る場合も考えて場所を選定していた。選択していた。 だから四阿の近くの場所を選んでいた。 その気遣いが、その小心が、その保険が、今回も役に立ったのだ。 虫に対しての防御に対して戻ろう。それもあらかじめ考えていた小心者のたわごとだ。 十数年間使い続けていたツェルトを、雪山でロウソクランタンで穴を開けたツェルトを新調し、モンベルからアライテントにし、駅前第四ビルにあるロッジで買物をし、会員証で10%割引きで購入し、だいぶ軽量化して、もってき忘れた細引代わりを100均で購入して、四阿に張ったのだ。100均で買ったフットプリントと共に張ったのだ。雨を避けるためではなく、虫を避けるために張ったのだ。 夜半の風の強さに目を覚ます。ツェルトが、その激しい風が、ボクを打ちつけ、ボクをゆっくりと眠らせてくれなかった。 気圧が通過していくのだろうか。明日の天気を期待せずにはいられなかった。時季外れの高気圧に押しだされて北上し、東北地方を覆っているという梅雨前線が更に北上するのを期待せずにはいられなかった。 午前四時過ぎ。薄明が始まり、鳥たちが夜明けの喜びを歌い上げるころ、虫たちもそのシンフォニーに伴奏を添え、眠り続けられないほどのオーケストラを作り上げたころ、その騒がしさに目を覚ました。